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CASE

『正解』の授業は無い中で、『議論をする文化』をつくり、授業力をさらに高める

花まる学習会 (株式会社こうゆう)様

※コロナ禍前の写真です

Introduction

「花まる学習会」や「スクールFC」を展開する株式会社こうゆう。子どもたちが「魅力的な人、そしてメシが食える大人」に育つこと、「学ぶ楽しさを知り、学習の仕方を身につけること」に重点を置いた教室です。情熱大陸・カンブリア宮殿など、数々のメディアに取り上げられ、366教室を展開するまで成長してきました。
「今後の成長のためにも授業力向上に取り組み続けることが、欠かせない」「教育は誰に教えてもらうか、人の要素が大きい」という考えのもと、リフレクトルを活用しながら、授業力向上のための「議論する文化」づくりに取り組んでいます。
今回はリフレクトル活用の内容、その中で経験したこと/考えていることを、人材育成部の臼杵允彦さんが語ってくださり、埼玉ブロックの高橋大輔さんが取組みの現場を案内してくださいました。

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▶人材育成部|臼杵允彦氏

新卒でリクルート・キャリアに勤めた後、花まる学習会に参画。教え子の人生を変えることができた個別指導経験がキャリア転換のきっかけになっている。

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▶埼玉ブロック|高橋大輔氏

大学院卒業後、通信制高校で教鞭を執る。 高校の教員時代に出会った子どもたちは不登校や引きこもりなど様々な事情を抱えており、その原因は幼少期の過ごし方、学び方にあると気付き、花まる学習会に入社。

1.人材育成部・臼杵允彦氏インタビュー

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「正解」の授業はない。授業力向上には「議論をする文化」づくりが大切

花まる学習会は、子どもたちを「メシが食える大人」「魅力的な人」に育てる教室です。創立は1996年。教室数が増え、現在では366教室、20,000人を超える会員の方々がいらっしゃいます。
この会員数を維持・拡大し、花まる学習会の教育をより多くの方々に届けていく鍵は授業力向上に取り組み続けることだと考えています。子どもたちが「もっと行きたい」と自然と口にする、親御様が「通わせてよかった」と言ってくださる教室をつくるためにも、本当に子どもたちが伸びているかを、講師一人一人が教育哲学を持って考えることが大切です。
花まる学習会には、「子ども達が、あきずに楽しく没頭する」教室運営を実現する、オリジナルの「花まるメソッド」があります。新入社員がこのメソッドを身につけられるよう、3ヶ月の研修プログラムも整えています。これにより一定の基準を満たす教室を展開できるのですが、教育は子どもたちに接する「人」の要素がとても大きいものです。特に花まる学習会の授業には、「正解」がありません。子どもによっても、保護者の方によっても「良い」アプローチは変わります。子どもを本当に伸ばすためには、一人一人の違いを見る力が大切です。また、例えば宿題忘れを流さずに「約束とは何か」を語るとき、接する大人が「自分の言葉」で伝えることが欠かせません。
すなわち良い授業の在り方は、人と時と場合によってどんどん変わります。この正解がない状況において、授業の質を上げ続けるためには、「議論をする文化」づくりがとても大切だと考えています。

課題は、「授業の見える化」と「全講師でどう授業向上の機会をつくるか」

当社の情報共有文化として、日報システムという仕組みを以前から導入していました。そこでは、例えば、講師の向き合い方によって子どもがどう成長していったかなどのエピソードを共有し合っています。授業で感じた気づきを、考え、言葉にする。そうやって醸成された一人ひとりの「言葉」が、全社員の「知」となっていく点が優れています。一方で、実際どんな授業を行っているかを映像で見て共有する、という点がずっと課題でした。日報システムにおいて、授業の工夫や子どもの変化などの情報の共有は「言葉」で毎日されているので、その上で、実際にどういう授業をしているのかを映像を見ることができると、「百聞は一見に如かず」で、さらに授業力向上のチャンスが生まれます。
またもう一つ、入社後3カ月の集中研修期間は、人材育成部が全社的な立場から関わるのですが、4か月目以降、本配属された後は地域ごとの各ブロックに育成を任せており、全社として育成に働きかける方法が限られていました。全社として、スポットで発達障がいや受験について学ぶなどの研修はしています。また定期開催している野外体験研修は、花まる学習会の教育、子どもへの責任感を考える良い機会です。同時に、日常の授業の内容に踏み込み、フィードバック/議論を通じて一人一人の授業力を伸ばす取り組みをもっと全社的に実施する必要性を感じていました。各ブロックにおける育成の意識は高いと感じていますが、同時に担っている仕事も多く、実際に育成にかけられる時間にはどうしてもバラつきがでます。

導入の過程では、新しい取り組みの浸透と、主体性の確保を両立させるため「最低限の縛り」をつくった

これらの課題の解決策を模索している時に、常務でSchool FC代表の松島の紹介もあり、リフレクトルに出会いました。代表の高濱に提案したところ、よくぞ見つけてくれたと反応してもらえたことが導入の弾みになりました。同時に運用方法が大事との話になり、社内で議論を重ね、以下の通り定めました。


  1. 1.全社として、「最低限の縛り」を設ける。そこから先は、各ブロックが運用を工夫する
  2. 2.「最低限の縛り」の内容は以下の通り

取組みには、各ブロックの社員に一定の負荷がかかります。そこで、いかにやらされ感ではなく、主体性をもって取り組んでもらえるかが肝と考えました。一方で、新しい取組みの浸透には取決めも必要です。そこで、全社として、「最低限の縛り」を設ける。そこから先は、各ブロックが運用を工夫する、としました。

見えてきたとても良い形

実際に導入して一年が経ち、とても良い形ができてきたと感じています。まず、他の教室がどのような授業をしているか、瞬時に見られるようになりました。また定期的に見る動きもできました。さらに、他教室の授業を見ることで「この教室長、良い授業をしていると評判だけど、客観的に見てみて、やはりこの先生と一緒にいたら明るい気持ちになれるなあ」と感じ、刺激を受けることができるようになるなど、一つ一つの授業の記録が花まるの資産となっています。また「見られている」ことは緊張感も生みますが、より授業を良くしていこうという意識の高まりにつながったと感じています。
その先にある、(視座・各自の教育哲学を高めることにつながる)「議論をする文化」が花開いていくためには、設定された「最低限の縛り」を超えて、各現場が自ら考えて運用を発展させていくことが大切だと考えています。当然、ブロックごとに違いが出てきますが、埼玉ブロックのあり方が一つとても参考になるので、実際の現場の声を聴いて頂くと良いと思います。 (2. 埼玉ブロック 高橋大輔氏インタビュー参照)

「メシが食える大人」になる卒業生が増えれば、日本の未来が変わる

子どもは感受性がとても豊かです。講師が投げる球によって、その子の会話が大きく変わる様を常日頃からみています。その度に教育は大切だと感じます。
私は新卒でリクルートに入り、求人広告の営業を経験した後に、花まる学習会に入りました。キャリアチェンジの背中を押したのは、一つの大きな原体験でした。私は大学時代、一人の生徒を個別指導塾で受け持ったことがあります。中学3年生の男子。あと半年で高校受験でしたが、それまで1年半不登校。偏差値は25。当初、私には、彼の心が荒れ、未来に絶望しているように見えました。それが一緒に時間を過ごすことでどんどん変わっていきました。半年後、志望校であった偏差値52の私立高校に合格した時は本当に嬉しかったことを覚えています。高校に入ってからもしばらく先生を務めていたのですが、私の就職を機に、もう連絡するなと伝えました。依存が生じると感じ、「自分の力で頑張れ」との意味を込めてです。それから4年間は連絡を取りませんでした。久しぶりに連絡を貰って再会した時、彼は名のある大学に入学し、立派に頑張っていました。受験でも、とても苦手だった英語の長文も乗り越えたと話していました。「なんでそんなに頑張れたの?」と聞くと、「先生と過ごした2年間のノートをずっと部屋の片隅に置いていて、時折それを見て頑張った」と。
私は当時、営業として人材領域に関わっていたので「メシが食える大人」について感じ考えることも多かったのですが、私の目の前にいる彼は間違いなく「メシが食える」大人になっている。ひょっとしたら引きこもっていたかもしれないところから、何よりも「意欲」の部分で変わることができた。彼自身、そして周囲の人々の未来へのインパクトを思うと、これはもう私がやるべきことは「教育」だと、稲妻が走りました。
そうした折、たまたま見たテレビで花まる学習会が取り上げられていました。「メシが食える大人に」というメッセージを聞き、子どもたちが川に飛び込む映像が目に飛び込んできました。そして授業を見学し、特に衝撃を受けたのが子どもたちのコミュニケーション能力の高さでした。私は先生でないのに、わーっと子どもたちが駆け寄ってきて。ゲームには没頭するけれども、人と話すのは抵抗ある子も増えている中でこれは凄いなと。こうした教育に力を注ぎたいと感じ、入社を決めました。
花まる学習会には約20,000人の会員がいます。これは毎年の数字なので、ものすごい数の卒業生を輩出していることになります。今の日本にはいろいろと問題があると思いますが、これだけの卒業生を送り出していれば、確実に世の中に良い影響を与えられているだろうと、情熱をもって仕事に取り組んでいます。そして、その情熱を、全社員が共有できている、幸せな職場だと思っています。

2.埼玉ブロック 高橋大輔氏インタビュー

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高橋大輔氏による実際の現場の案内、解説

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高橋

我々のブロックでは、毎朝10:30~11:00に「リフレクトル・タイム」を設けています。毎週「主人公」を決めて、その人の授業を、火曜日~金曜日の時間に隅々まで見て、各自がリフレクトルにコメントを書き込みます。そして月曜日が、主人公の授業を深めるための議論をする時間です。(月曜日の当該時間に取材させて頂いた)

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※コロナ禍前の写真です

皆さん、とても積極的に議論されていますね。動画を見ながら議論をする単位が、3~4人という丁度良い人数にチーム編成されているのも大変参考になると思いました。

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佐々木

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高橋

最初は一人の授業を全員で見て議論をしてしたのですが、そうすると主人公の番の回ってくる回数が限られてしまいます。また議論の際の一人当たりの発言量も少なくなり、どうしても効率が悪い。全員がお互い高め合うためには、少人数のチーム編成が良いと考えてこの形になりました。

授業の振り返りにおいて、高橋さんが大切と思われている指摘の観点などはありますか?

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佐々木

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高橋

2つあります。1つは、授業をしている人が教材の意図の酌みとった上で子どもたちとリンクさせられているか。花まる学習会の授業は一定の型があります。教材AとBを使用して、この手順で進める、など。ただ、型を表面的になぞるだけになると、教材の意図が子供たちには伝わりません。そのことが動画で振り返ると顕著に見てとれます。「今の授業展開は、明らかに独り相撲だよね」などと、「子供が躍動する」をキーワードにして議論をしています。

もう1つは、「言葉の用い方」。例えば、言わなくて良いことを間に挟んだせいで子供の集中力が切れてしまったこと、逆にとても良い言葉を伝えられたことで子供のモチベーションがぐっと上がったこと。流れてしまいやすい言葉が、具体的なままで記録に残り、当該場面を動画で再生しながら振り返れるので、本人の実感を伴う指摘・議論が可能になりました。

本質を捉えることと、具体的に表現することの両面をおさえにいっているのですね。

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佐々木

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高橋

はい。そして両者はつながっています。例えばよく見受けられる表現に「かっこいい」があります。この言葉は使いやすいのです。「かっこいい鉛筆の持ち方だね」「かっこいい姿勢だね」と思わず言ってしまうんですね。この時に「かっこいい」が子供たちと共通言語になっているのかを、立ち止まって考えることが大切です。

「姿勢」についてだと、「背中とお腹にグー(拳)を一つずつ入れて、椅子から背中を離して机に向かうよ」と伝えられれば、具体的であり、子どもたちとの認識がずれないのですが、ただ「かっこいい」と表現してしまうと、子どもによって理解が異なってしまう。すると教室全体の姿勢が良くなるのではなく、一部の子だけが分かる状態になる。それは健全な状態ではないよね、などと議論しています。

一部の人だけが分かっていることを、みんなが分かる言葉・共通認識に変えていくのは先生の力ですね。

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佐々木

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高橋

はい。具体的にどのような言葉を用いることで子供たちに伝えられたのかを、可視化し、明確に認識できることがとても良いと思っています。「主人公」の授業をテーマに議論をしていますが、その人の授業改善につながるだけでなく、我々全員の共通認識づくりにつなげていきたいと思っています。

高橋さんの説明自体が、とても具体的で分かりやすいものでした。

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佐々木

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高橋

一年間取り組んできた中で、言葉が磨かれてきていると感じています。リフレクトルを活用し始める前も、他の人の授業を見に行ってコメントすることはしていました。リフレクトルを使い始めてからは、コメントしたいと思った場面を何度も繰り返し再生し、伝える言葉を考えるようになりました。その蓄積により、先ほど「姿勢」に関して述べたようなことを言葉にできるようになりました。

みんなのフィードバック力も上がっていると思います。「この授業の問題点はここだよね」と指摘する力、「こうしたらもっと良くなるんじゃないかな」と考える力が、一年間の取組みを通して全体的に高まってきた実感があります。

そして他の人にフィードバックできることは、自分自身を客観視できることにもつながってきますよね。

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佐々木

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高橋

ブーメランというか(笑) 人に言うからには、自分が出来ているかにも自然と向き合うようになりますね。

花まる学習会は、子どもたちを「メシが食える大人」「魅力的な人」に育てる教室です。創立は1996年。教室数が増え、現在では366教室、20,000人を超える会員の方々がいらっしゃいます。

column

3.コラム : リフレクトル運用のティップス

導入決定にあたっては、まずは1ブロックでトライアル。その際の使用の仕方は極力シンプルに (臼杵允彦氏)

リフレクトル導入にあたっては、本格導入の前に、1ブロックでトライアルしたことも良かったと感じています。まずは新しいものの受け入れに前向きなブロックに話を持っていきました。この事例をもって社長にプレゼンをするから頑張ってほしいと、協力をお願いしました。リフレクトルには様々な機能がありますが、まずは抵抗感なく使用してもらいたく、シンプルに2つだけ覚えてくださいと伝えました。「動画のアップロード方法」と「フィードバックの入力方法」です。「評価基準」の活用も重要ですが、最初はその説明もあえてしませんでした。そしてブロック内に担当者を立てて、その人が質問に答えるとしました。

年次の高い社員が最初に「主人公」になり、真摯に内省する姿を見せた (臼杵允彦氏)

本格導入後、「最低限の縛り」を定めると同時に、「入り方」にも気を配りました。多くの人は、自分の授業を見られるのが怖い、フィードバックをもらうことには抵抗感があると感じます。この状態から、フィードバックをもらえて良かったと捉えられるようになる、マインドの転換が鍵と感じました。
「入り方」として焦点を当てたのは、年次の高い社員です。一般論として、若い社員よりもフィードバックを受けることへの抵抗感が強い。仕事も多く抱えていて、新しいことに取り組めない理由もつけやすい・・・影響力もあるので、この層が変わると、全社に波及すると考えました。
具体的には、年次の高い社員から上述の「主人公」になってもらいました。要改善と指摘されたところをどう議論するか、受け止められるかには、受け手の器が問われるとも伝えました。この中で、良い事例が幾つも見えたことが、その後の展開の弾みになりました。
一つの事例では、「伝説の社員」ともいうべき高評価の人が最初に「主人公」になり、リフレクトルを活用しながらとても真摯に内省をしている姿が見られました。自らの授業に対して「こんなにも早口で聞きとりにくく話をしている」と振り返ったり、普段見ることがない後輩の授業を見て「こんなにも一体感のある授業をしている」と評価し、そこから学びとろうとたりなど。
また当社は日報というその日に感じたことを書くブログがあるのですが、上記とは別の事例にて「先輩が改善点をしっかりと受け止め切っており、素晴らしかった」との投稿がありましたので、全社で共有し、該当する人を讃えました。
なお、年次が上の人に対して、要改善のフィードバックを入れられるかとの懸念はあったのですが、若い社員が遠慮なく入れることも分かりました。

ディスカッション機能の活用 (高橋大輔氏)

リフレクトルを使う際は、フィードバックごとにディスカッションできる機能も、重宝しています。「ここ、みんなで議論したよね」と思い出すことができ、その内容が記録として残せるのは有用です。

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4. コラム : 今後の幅の広げ方について

講演会で話す力も高めてゆきたい

今後は「授業力」に加えて、「講演会」で話す力の向上にも取り組んでいきたいと思っています。
塾の広報というと、CMや雑誌/公共交通機関への広告掲載、チラシなどのイメージがあるかと思いますが、花まる学習会は、「講演会」が基軸です。教育についての考え方を保護者の皆様の前でお伝えし、共感の輪を広げ、会員になって頂く。
花まる学習会で働いていると、「話す力」は着実に伸びますが、保護者の心が動く事例をもとに90分間、講演できる人はまだそう多くはありません。1年に1回、講演会研修という機会はありますが、今後は、それぞれの力を伸ばす機会としてもリフレクトルを最大限活用していきたいと考えています。