Introduction
株式会社エスクリは、専門式場、ゲストハウスなど多様な業態で全国に展開するウェディングサービス企業です。社名の由来は”STAFF CREATE”。「時代が変わっても、『人の力』は変わらない。信頼できるスタッフ、信頼できるチームで、顧客の期待を超えていく。」を理念に掲げ、2003年6月の創業以来、人の力をコアバリューとし、その接客力で大きな成功を収めてきました。直近の売上高ランキングでも業界4位につけるリーディングカンパニーです。
コロナ禍でブライダル業界全体が苦境に陥りましたが、自社と業界全体の未来のため、まずは自社の接客力を、限界を超えるところまで上げることを目指され、2023年2月よりリフレクトルを導入。主に新規接客を担う新卒及び中途入社社員の育成で活用され、確かな手応えを感じてくださっています。
今回は、ブライダル事業本部 セールス統括部部長半澤卓也氏に、ウェディングサービスの仕事と業界全体に対する想い、育成の仕組み、リフレクトル導入前の課題、リフレクトルを導入して得られた効果などをお話しいただきました。
▶半澤卓也さん
外資系レストラン、ホテル婚礼経験し中途入社
青山・広尾・新横浜プランナー経験 年間セールス/年間MVP獲得
広尾・福岡・銀座支配人 年間チーム賞/年間マネージャー賞 2度受賞
ブライダル事業本部副本部長任命
エスクリマネジメントパートナーズ本部長 兼 執行役員
現在 ブライダル事業本部 セールス統括部部長
・対面を前提とした育成では、一人前になるまでに年単位の時間がかかる
・属人的な育成で、一人前になった時のスキルのばらつきが気になる
・クラウド化して隙間時間を有効活用し、PDCAを週単位で回せるようになったことで、育成期間を半年に短縮できた
・システムを活用しながら、育成者間で取り組みを共有することにより目線が揃った
上記課題解決に加えて得られた効果
・新卒社員の成約率が半年で6.6%向上。単月で70%の成約率を出す人も
・主体性や目標達成意識といった社会人としての基礎力が育まれた
・本当の意味でお客様目線に立つことができるようになった
INDEX
- 接客力を、限界値を超えるところまで上げ、ブライダル業界全体の未来へつなげる
- 顧客満足にとどまらない顧客感動を追求。接客スタッフに期待される高レベルの接客力
- コラム:エスクリの育成の仕組み・取り組み ~ 6名の育成者が育成業務に集中し、週単位でPDCAをまわす
- 育成課題「育成には年単位の時間がかかる…」「属人的な育成によりスキルがばらつく…」などが、リフレクトル導入により解消
- 新卒社員の成約率が半年で6.6%向上。リフレクトル導入によるプラスαの効果
- コラム:リフレクトルを通じて育成対象者と向き合う中で印象に残っているエピソード
- エスクリとして今後実現したいこととブライダル業界全体へのメッセージ
1.接客力を、限界値を超えるところまで上げ、ブライダル業界全体の未来へつなげる
はじめに、株式会社エスクリとして大切にしている考え方を聞かせてください。
半澤さん:この質問を事前に頂いたことは、改めて大切にしていることを考える良い機会になったのですが、まず頭に浮かんだのは、直近のコロナ禍の経験でした。ブライダル業界では、事業撤退を余儀なくされた結婚式場、会社が多くありました。我々もいくつかの式場をクローズする判断をしましたが、ブライダルに携わるものとしてこれほど悔しいことはありませんでした。式場の建物を失ってしまうことは、そこで挙式されたお客様の大切な思い出の地が無くなってしまうことです。皆で作り上げた式場を失うことに、チームとしても非常に辛い想いをしました。
この経験を通して、大切にしたいと考えたことは、まずは弊社の接客力を極限まで引き上げることです。結婚式を挙げたいと少しでも思ってくださった方の夢を、できる限り多く形にする。それによって、弊社の接客力が評価され結果につながれば、評判は社外にも届くでしょう。すると新規出店、店舗拡大の機会を作り出せるかもしれない。或いはコンサルティングのご依頼をいただくことを通じて、他の式場を救えるかもしれない。そうしたチャンスを活かして、自社そして業界全体の未来へとしっかり繋げていきたい、と考えるようになりました。これは、経営者の考えであり、私の考えでもあります。
2.顧客満足にとどまらない顧客感動を追求。接客スタッフに期待される高レベルの接客力
接客力を、限界値を超えるところまで上げることについて、より詳しく教えてください。
半澤さん:ブライダル業界ではどの会社も共通して高い顧客満足を目指していますが、弊社が新規接客者に期待しているのは、お客様の求めている基準値を満たすことによる顧客満足にとどまらない、基準値を超えることで生まれる顧客感動をいかに追求できるか、です。例えば、会場見学では、会場の雰囲気をただお見せするのでなく、夢のような結婚式を実現できるという、目に見えない無形の価値まで提供しています。実際に、案内を受けて、感動の涙を流しながら会場をご覧になるお客様もいらっしゃる。そのようにお客様の心を動かすご案内ができる接客者、式場が増えていけば、結婚式への期待値を上げていくこともできると思います
一生に一度の結婚式。数ある式場の中から一つの式場に決めるのは、お二人にとって人生を決める決断だと思っていますので、高い期待値を持って「この会場で結婚式を挙げたい」と思っていただきたいと思っています。そして、特に新規接客においては、接客者自身が限界を決めるのではなく、「期待値はお客様が決めるもの、その期待値をさらに超えていける」という気概で、高いレベルで接客できる人が、業界に増えていってくれたらすごく嬉しいと思っています。
コラム:エスクリの育成の仕組み・取り組み ~ 6名の育成者が育成業務に集中し、週単位でPDCAをまわす。
現状、社内で認定した6名の育成者が育成業務に集中して取り組んでいます。育成者に認定する基準は、個人でプレイヤーとして実績を残していること。加えて、自身のノウハウを伝えるスキルを備えていることです。伝えるスキルについては、その人が過去に育成した人が実績を残しているかどうか、育成者として結果を出せているかを見ています。
育成対象者は、新規接客部門に配属された新卒がメインで、一部中途入社もいます。リフレクトルを活用し、1人の育成者が拠点を跨いで3-4名の育成対象者を担当。育成者と育成対象者のマッチングについては、育成者で議論してベストな選択を心がけています。結婚式の夢を語ることが上手い人もいれば、ハードスペック比較や予算比較など条件の提案が得意な人もいるので、育成対象者のどこに伸び代があるのかを考えて、個々の成長のニーズに合わせてマッチングしています。
育成者と育成対象者は、週1回2-3時間、少なくとも1時間は、週末の接客を振り返る時間を設けます。リフレクトルで実商談の録画を見ながら良い点と要改善点を伝えたり、次のロープレ課題を出したりする時間です。そうした育成の状況は、毎週月曜日の育成報告会で、育成者全員で共有します。合わせて、(週末に主に行われる)新規接客の実績を確認し、「この子は週末こういう実績だったから、今週はこの育成をしよう」と決めていく。このPDCAを週単位でまわしています。
育成対象者は一定のレベルに達したら卒業となります。瞬間値では意味がないので、社内で定めた基準となる数値を数ヶ月間連続してクリアした人について、育成者が議論を重ねて卒業認定しています。
3.育成課題「育成には年単位の時間がかかる…」「属人的な育成によりスキルがばらつく…」などが、リフレクトル導入により解消
リフレクトル導入前に感じていた育成課題にはどんなものがありましたか?
半澤さん:人材育成って本当に時間がかかるんですよね。一人前になるまでに年単位の時間がかかります。そうした時間を経て、スキルがついてきて、これからやりがいや面白さを感じられる、会社としても実績につながるというところで、例えばライフステージの変化があり、土日の仕事が難しくなるなどして、離職していく人が少なからずいました。そこで、数年かけて育つところを半年で育てるという、育成のスピード感を上げることが、業界としても弊社としても大きな課題としてあります。
新規接客の育成は、レクチャーし、ロープレを行い、フィードバックするというサイクルを回すことが必要ですが、以前、対面で取り組んでいた時は、このサイクルを回すのにすごく時間がかかっていました。コロナ禍でオンラインコミュニケーションが普及したことにより多少スピードは上がりましたが、まだ不十分と感じていました。
リフレクトルを導入して非常によかったと思っているのは、お互いの時間で、隙間時間を有効活用して進められることで、このサイクルをとても早く回せるようになることです。
私(半澤さん)も育成者の1人としてリフレクトルを使っていますが、通勤時間を使って育成対象者の接客を確認しています。動画を見ながら評価を入力し、「この子は今こういう課題を持っているから、今日はこんなレクチャーをしよう」などと考えながら通勤しています。業務時間中は色々な相談が来たりして忙しくしていますが、通勤時間は自分だけの時間になるので育成に集中できるんです。今まで使えなかった時間を育成に充てることができるようになり、課題発見〜次の課題へ着手のPDCAを超高速で回せるようになりました。
指導の効果についてはいかがでしょうか?
半澤さん:人材育成はどうしても属人的になりがちですが、一人前に到達したとされている時に、会社が求めているレベルから乖離していたり、ばらつきがあったりするのが気になっていました。
弊社では、週に一度、育成者が集まって育成報告会をしていますが、いろいろな育成者がいるなかで、それぞれがリフレクトルで可視化されたデータを元に、育成の方針を共有します。そうした共有を積み重ねるなかで、自ずと育成者たちの目線が揃っていったと感じています。
4.新卒社員の成約率が半年で6.6%向上。リフレクトル導入によるプラスαの効果
先にお話しいただいたこと以外に、リフレクトル導入の効果を感じるところはありますか?
半澤さん:定量的な部分では、4月入社の新卒社員のうち新規接客部門に配置された20名について、5月の育成開始時の実績と半年後の実績を比較して成約率が6.6%上がったという数字が出ています。単月ではありますが、7月に70%の成約率を出した人もいて、リフレクトルのおかげだと感謝しています。
定性的な部分では、リフレクトルでは自分の動画を上げるだけでなく、他の育成対象者の動画を見ることができるので、自分と他の育成対象者を比べた時の違いや差を、自ら埋めにいくことができる雰囲気が醸成されています。さらに、個人に与えられた課題をクリアしていくことによって目標達成意識も醸成できています。このように社会人にとって大切な基礎力が育まれるのは、非常に良い点だと感じます。
また、本当の意味でお客様目線に立つことが叶うのも良いところで、極端に言えば一時停止をしながら自身の接客を確認できるので、声の抑揚、表情、言葉の伝え方・伝わり方まで振り返るような、緻密な取り組みができています。
コラム:リフレクトルを通じて育成対象者と向き合う中で印象に残っているエピソード
中途入社社員の中に、リフレクトルに自分の動画を上げるだけでなく、リフレクトル上にある他の育成対象者の動画を見て自己流で採点し、良い動画を自分のものにしようと動いている人がいました。こちらから教えたわけでも、前例があるわけでもないのに、自分から情報を取りにいく。成長に対して貪欲な人はこういう使い方をするのかと感心しました。リフレクトルという、全国にいるメンバーの動画を、タイムリーに、過去のものも含めて、いつでもどこでも見ることができるクラウドシステムがあればこそだと思っています。私が新人の頃も、ロープレを録音したデータがファイル共有されていましたが、他の事業所のものを聞きたいと思ってもなかなか探し出せずに苦労しました笑
育成者として一番嬉しいのは育成対象者の卒業が決まる時です。育成者全員で議論して「もう卒業でいいよね」と意見が一致すると、画面越しで拍手をすることも。育成者として一番幸せを感じる瞬間です。
リフレクトルは育成ツールであるものの、日頃から動画を見ていると、ロープレの様子、所作、顔つきなどから悩みがあるのかもしれないと感じ、声をかけると実際にその通りだったということもありました。動画だからこそ、そして、こまめに運用しているからこそ、離れた場所にいても些細な違いに気づくことができる。リフレクトルにはこういったメリットもあるようです。
5.エスクリとして今後実現したいこと。ブライダル業界全体へのメッセージ
株式会社エスクリとして、これから実現したいことはありますか?
半澤さん:ブライダルの接客の仕事はサービス業の中でも最高峰の仕事です。そういう仕事であるという自覚のもとに努力を重ね、接客を通して自分自身の成長を実体験として感じることが、さらなる成長につながると思っています。これまで年単位でかかっていた育成は半年できるようになってきましたので、短期間でそうした成功体験を繰り返し、やりがいや面白さをいち早く感じてもらいたいです。そうして接客の仕事を極めていく人を1人でも増やして、サービスの質をさらに高いレベルへと引き上げていきたいと思っています
最後に、ブライダル業界全体へのメッセージがあればお伺いしたいです。
半澤さん:ブライダル業界に必要なのは、結婚式を挙げたいと思う方を世の中に増やし、結婚式の実施率を上げていくことです。仮に我々だけがいい結婚式を作ったとしても、世の中の雰囲気を変えるのは難しい。業界全体でいいものを作っていこうという視点を持って取り組めば、さらなる発展を目指すことがきっとできるはずです。我々だけが良ければいいとは全く思っていませんので、業界の中で注目をいただける結果を残すことができ、ご縁をいただく機会があれば、他社様のご支援も行なっていきたいです。競い合う“競争”も大事ですが、今は、共に走っていく“共創”のほうが大事なフェーズだと思います。一緒に業界を盛り上げていきたいと思っています。