営業パーソンの糧になる本

本コーナーでは、営業パーソンとして確かなキャリアを積み上げられた方に伺った「自分の糧になった本」のインタビュー記事を掲載してゆきます。

「戦略プロフェッショナル」「ローマは一日にして成らず」by 中下 真さん – atama plus

中下 真さん

2004年リクルートに新卒で入社。初めの一年間は人事部で新卒採用に従事。「飛び込み営業のようなもので、学生に友達を紹介してほしいと言い続ける一年間」。2005年4月~2009年3月、リクナビ/リクナビネクストのHR営業。最後の年にはリクルートHR事業の営業として年間最優秀賞を受賞。2009年4月~2011年3月、リクルートホールディングス社長秘書。2011年4月から一年間は、海外大学の優秀な学生を日本に連れてくる新規事業に従事。2012年4月~2016年3月、RECRUIT China。2014年1月~2016年3月末は総経理(現地社長)。2016年4月から、リクルートキャリア東海・関西営業部長。2017年3月末に退職し、2017年4月にatama plusを共同創業。AIを活用し、子供一人ひとりに最短で「分かる」を提供するEdtech事業を経営している。

まず、ビジネス本として面白いと思った本は、三枝匡さんの「戦略プロフェッショナル」。「戦略を描くスキル」を、物語で伝えています。
この本を挙げた背景を述べると、特定の本からだけ仕入れられる「営業スキル」で、結果が劇的に伸びることは少ない気がしています。もちろん基本的な「営業スキル」は存在します。例えば、お客様のことを否定しない、聞くを80%にして話すは20%におさえる、など。ただ、これらの「営業スキル」はどの本を読んでも書いてあることは近しいと思っていますし、身に付けることが必要な種類も限られていると思います。そしてほとんどのことは会社が教えてくれる。大切なのは、その基本的な営業スキルを実践して身に付けることです。そのためには実践で成功失敗を繰り返してフィードバックをもらうこと。未知の営業スキルが載っている本を探すことではないと思っています。だから「営業スキル」の本はあまり読んでいません。
ちなみに営業には「スキル」以上に「スタンス」がとても大切だと考えています。自らの提供できる価値がお客様の役に立つものであれば、喜んでお金払ってもらえる。いかにして目の前のお客様に喜んでもらえるか、価値を届けられるかを考えて行動し続ければ、営業はうまくいくと思います。
キャリアを積み重ね、一営業パーソンから営業組織を束ねるリーダーになったとき、多くの人が躓きを経験します。そこで求められるのはまずは人間力。これは若い時から磨き続けるもの。そして組織をまとめて戦略を描くスキル。この組織・戦略のスキルを学ぶに至って私は「スキル」本を読む価値を感じました。営業のスキルは種類も多くなく会社がほぼ全て教えてくれるけれども、組織・戦略のスキルは幅が広くて会社が体系的に教えきることは難しい。さらには成功失敗が分かるサイクルが長く、実践からの学びに時間がかかるためです。
そこで組織・戦略について実話を元にして非常にリアリティを持った学びを与えてくれる、かつビジネスパーソンとしてのスタンスについても豊富な示唆を与えていただいた「戦略プロフェッショナル」をおすすめの本として挙げました。

もう一冊(シリーズ)は、塩野七生さんの「ローマ人の物語」。この小説はローマ帝国が興ってから滅びるまでの1400年を描いています。私はこれを読んだとき、当たり前かもしれませんがローマ帝国は一つの国として経営されていたのであって、企業経営と重なるものを多く感じました。ローマ帝国は長い時間をかけて、企業が興されてから倒産するまでの問題をたどったようにも思えました。独自の哲学に基づいて周辺の国を統合していく様子はさながらM&Aのように思えましたし、自国とは全く関係のない遠い国での出来事が国の危機につながったりと、ビジネスでも起こりそうなことが次々と出てきて非常に面白いです。
また、二千年前も今も、人や組織の在り方は変わらず、そこから伝わってくるメッセージも数多くありました。高い地位にある人間が誤った判断をすることでローマ帝国でさえ国全体が危機に陥る、国の規模拡大後に硬直化する組織についての悩み、ある時代の英雄は次の時代になると邪魔になるなど。
そして「ローマ人の物語」は、登場人物がそれぞれの局面で、なぜその行動をとったのかを、背景も含めてとても詳しく描いています。だから感情移入ができて、物語の追体験ができる。そもそも僕は自分が体験したことは身に残りやすく、知識としてだけ得たものは活用するのが下手です。もちろん小説はフィクションですし、自分の体験とまではいきませんが、それを差し引いても一定程度追体験ができることが魅力的です。それがあって前出の「戦略プロフェッショナル」も好きなんだと思います。