感動体験を創造し、紹介で受注を取れる営業とは
感動体験とは、顧客が人やモノと直接触れ合う機会を通じて、自らの潜在ニーズを認識して、心が動きそれに関わった人や事業者への「感謝(ありがとう)」の気持ちが生まれる体験を指します。昨今用いられる「顧客体験」をより突き詰めた形であり、私が最も大切と考える営業の在り方です。
住宅販売では、顧客が商品(住宅)を購入するまでの過程である接客や購入後のアフターサービスなどの顧客体験で、感動を体験していただくことができます。たとえば、来場時にお誕生日をお祝いするおもてなしをして和やかな雰囲気に包まれたなかで、検討中の住宅において顧客に合った生活を提案。そこから「ああ、リビングの広さを一定以上確保すれば、私の思い描いていた暮らしを実現できるんだなどの気づきが生まれ、その気づきを与えてくれた営業に感動し、感謝の気持ちが生じる。このプロセスが感動体験です。このような潜在ニーズが営業の存在により引き出されることで、感動体験が生まれます。
気づきが大切なのであれば、「わざわざお誕生日を祝う必要があるのか?」と思うかもしれません。しかし、人間関係が築けていない状態でヒアリングしたらどうなるでしょうか?ありきたりな答えしか返ってこず、心の奥底にある考えを呼び起こし、そのことに感謝されるような対話は生まれないでしょう。心を許してもらえる状態をまず作ることが感動体験を創造する土台になります。
感動体験の創造には、ある種、営業としての利害関係や効率性を度外視してでも、おもてなしや思いやりなど人としての誠実さを追求することも必要です。ときには成果につながらないこともありますし、労力もかかります。しかしそれが、人の感情に訴えかけることになり、他との差別化につながり、デジタルだけでは実現できない「営業」の存在価値となります。
その上で、ホテルなどの接客業はおもてなし自体が提供価値の中心なのに対して、私たち住宅不動産営業は住まいのプロとして、住まいに関する「潜在ニーズ」を引き出すことが感動体験の核になります。
顧客が、感動体験を得るとどうなるでしょうか。顧客はファンとなり、自らの感動体験を自慢したくなります。それはすなわち、紹介により新たな顧客を獲得できることにつながるのです。
感動体験を提供できるような力を身に付け、紹介が得られると、それがさらに力の源泉となって自信がつき、さらなる感動体験の提供につながります。紹介が紹介を生み、継続的な売上向上につながります。
紹介から生まれた商談は、成果につながりやすい
紹介を得られることは、商談の機会が増えるだけでなく、成約率が高まることにもつながります。
通常の商談では、まずお客様の信頼の獲得にエネルギーを注ぐ必要があります。それは成功する時もあれば、時に上手くいかないときもあります。しかし紹介で出会うお客様の場合、紹介者への信頼が営業への信頼となり、はじめから一定の信頼が得られています。そもそも、紹介は信頼によって成り立ちます。紹介者にとって、仮に自分が自信をもっておすすめできない住宅不動産会社を紹介し、相手が不快な思いをしたら、自分の評価にも関わります。紹介は、絶対的な信頼がなければ生まれません。そのため、通常の商談では、まず最初のハードルとなる信頼獲得が、既にクリアされている状態で商談が始まるのです。その後の意思決定にも加味されるため、自ずと成約率が高くなります。即ち確度の高いお客様に、使える時間が増えるため、全体の成績も高くなります。
くわえて、展示場来場や広告への反響など、会社頼みの営業機会獲得のみだと、自分で営業成績をコントロールできない部分も出てきます。しかし紹介の場合、自分の実力で営業機会をコントロールできるようになるのです。
会社にとっても、紹介営業ができる営業が増えると、安定的な売上向上につながります。これほど心強い戦力はないでしょう。
自らの力で役に立っているという感覚は、営業職として働くことの誇り、喜びを感じられます。ぜひそうした姿にたどり着いてほしいと思っています。