シナリオ準備で、まずはじめに決めるのが「ゴール」です。その商談で何をゴールにするべきかを考えます。
もちろん、最終目標は「契約」です。しかし初回接客で契約が決まることは稀です。お客様の来店ごとのゴールを順序立てて決めて、その都度の接客で達成していくことが大切です。
具体的には、初回の来店は「土地案内のアポを入れる」、2回目は「銀行の審査準備をしてもらう」などのゴールを設定しています。
では、どうやってゴールを決めれば良いのか。
前回、反響電話の聞くことリストとして次の項目を挙げました。
✓ 問い合わせの理由(気になる物件があるのか、会社が気になるのか、など)
✓ 名前
✓ 住所
✓ 家族構成
✓ 電話番号
✓ 家を考え始めてからどれくらい経つか
このうち、「問い合わせの理由」がゴールを決めるヒントとなります。
たとえば物件を指定して問い合わせしている場合は、物件への指向性が高いといえます。その場合、初回でも物件案内を求めていると読めます。ただ、初回に必ずしも意思決定に関わるすべての方にご来場いただけるとは限りません。そこで初回のゴールは、「物件の購買意欲を高め、次回はご家族および意思決定に関わる他の方がいれば、その方も一緒にご来場いただく」と設定します。
一方で住宅相談の場合、実際の物件を見るほどの熱量がない場合があります。そのためゴールを「お客様の住宅に求めるポイントを明確にする」ことをゴールにします。
3つの軸でシナリオ準備
シナリオは、①お客様が住んでいる物件、②お客様が問い合わせた物件、③お客様の理想の物件の3つの軸で考えます。これら3つの情報を組み合わせることで、お客様のニーズが想定でき、感動体験の提供につなげることが可能です。
では、ヒアリング内容からどのように3つの軸に落とし込んでいくべきでしょうか。
現状から分析する
特に初回面談前は、得られる情報が問い合わせ内容や反響電話に限られています。少ない情報から、推測しなければなりません。一方で、「現状」についてはかなりの情報が揃っています。以下、現状から分かる分析です。
住所
たとえば賃貸に住んでいる場合。どんな間取りなのか、どれくらいの家賃なのか、築年数は何年か、オートロックはついているかなど、住宅への指向性を推測することができます。駐車場がある賃貸であれば、実際に足を運んで、置いてある車の種類をみることで、どんな人が住んでいるのかも推測できます。
また、その住所から生活の利便性への考え方も見えてきます。駅前、スーパー、学校の近さなどをどう考えているのかが見えてきます。お客様からすると、今住んでいる場所より良い立地であれば、必然的に土地への納得感が得られます。
実家暮らしの場合も、子どもの頃からどのような生活圏内で暮らしてきたか、どのくらいの資産がありそうかを予想できます。
家族構成
子どもが居るご家庭の場合、子育て環境は家選びに切っても切り離せません。近くに保育園や学校があるか、小児科が近くにあるかなども、家を考える基準となります。
一方で子どもが居ないご家庭の場合、老後の暮らしに関心がある場合が高い。バリアフリーデザインになっている、スーパーや病院が近いなどが響く傾向があります。
家を考えてどのくらい経つか
1か月以内の場合は、まだ競合に足を運んでいない可能性が高い。税金やローンの説明をより細かく詰める必要があります。
3か月以内の場合、すでに競合に出向き、お金の話については聞いている可能性が高い。そのため、物件の話をメインで進めます。
半年以内の場合は、大体一度土地や家を買おうとして失敗している方が多い。買おうと思っていたけれど、ほかの人に先を越されていたケースです。この場合、表に出ている物件だと、また先に買われてしまうかもと恐怖感を抱いている可能性があります。そのため、自社がもっている未公開物件を提示すると刺さる可能性があります。
一年以内の場合、「グルメ」状態になっている可能性が高い。物件へのこだわりは強いものの、予算との釣り合いが取れていない場合です。他社からは面倒くさがられて、良い対応をされていないことも多く見受けられます。あえて逆を張って、付き合いを密にして、現実をしっかり伝えてあげることで、信頼を獲得できる可能性があります。
一年以上の場合は、良い物件がないからではなく、「信頼できないから」の場合が多い。本人も「面倒くさいことを言っているから、相手にしてもらえない」と気づいていることもあります。この場合も、逆張りをします。密にコミュニケーションをとり続けます。一度信用してくれれば、こちらが裏切らない限り、話を聞いてくれます。
現状と問い合わせた物件から、理想をイメージする
たとえば、現在徒歩5分のところにスーパーがあり、問い合わせ物件が徒歩3分にスーパーがある場合。このお客様は、スーパーとの距離を重視していることが考えられます。
現状と問い合わせ物件との差異から理想が予測できることもあります。現在は2LDKの賃貸に住んでおり、4LDKの物件をお問い合わせいただいた場合。現在、広さで課題を感じており、子ども部屋がつくれることや収納の広さが響くと考えられます。
シナリオを組み立てる
このように、ヒアリングの内容からお客様の状態、求めていることが推測できます。
ただし、調べてただ推測するだけでは、「感動」にはつながりません。これらの内容をもとに、シナリオを組み立て、接客につなげることが必要です。
シナリオ組み立てのポイントは、お客様の「理想の物件」「住んでいる物件」「問い合わせた物件」の3つを組み合わせることです。
たとえば、「理想の物件」として利便性を重視していると考えられるお客様の場合。「今『住んでいる物件』はスーパーまで徒歩8分。『お問い合わせ物件』は5分なので、今より一層利便性があがりますよ」と伝える。ただ「徒歩5分にスーパーがある」と伝えるよりも、いかにお客様のことを理解しているか、いかにお客様に合った提案しているかが分かり、効果的になります。
物件に広さを求めていると考えられるお客様の場合。
「リビングは今住んでいる物件の1.5倍程度の広さで、ゆったりと過ごすことができますね。子ども部屋をつくることもできます」と伝える。お客様に現状と理想を伝えることで、腹落ちしやすくなります。
指定の問い合わせ物件がなくても、現在の物件から想定することも可能です。「現在、駅から10分の物件に住んでいらっしゃいますよね。ちょうど今、駅チカの物件の募集を始めたところなんです」と伝える。お客様の購入意欲をぐっとあげることが可能です。
このように分析した情報を交えて物件の魅力を伝えることで、「この営業は自分たちを理解して提案してくれている」と感じていただくことが可能です。