2019年11月28日

フリーランス協会 平田麻莉氏:プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランスという新しい働き方 – 早期戦力化の新潮流#2・レポート

Co-Growth社が主催するシリーズセミナー「早期戦力化の新潮流」では、 先進的な組織がいかにして人材の持つ力を最大限に引き出しているかをテーマに、有識者・実践者に登壇をお願いしています。 第2回目のテーマは、年々社会的ニーズや市場が拡大している「フリーランス・独立プロフェッショナルの戦力化」。本レポートは、登壇者のお一人、フリーランス協会代表理事(今回はハイスキルフリーランサーとして)平田麻莉氏の講演の記録です。

平田氏画像

◆一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事
平田 麻莉氏
慶應義塾大学総合政策学部在学中にPR会社ビルコムの創業期に参画。Fortune 500企業からベンチャーまで、国内外50社以上において広報の戦略・企画・実働を担い、戦略的PR手法の体系化に尽力。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院への交換留学を経て、慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。現在はフリーランスでPRプランニングや出版プロデュースを行う傍ら、2017年1月にプロボノの社会活動としてプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会設立。 新しい働き方のムーブメントづくりと環境整備に情熱を注ぐ。政府検討会の委員・有識者経験多数。[HP] https://www.freelance-jp.org/

目次

1.ミッション型フリーランスとして複数企業の広報を担当
2.フリーランスによるフリーランスのための非営利団体「フリーランス協会」を設立
3.PR会社勤務からフリーランスデビューを経て、現在は仕事の8割以上がフリーランス協会での活動
4.なぜフリーランスなのか、5つの理由(平田の場合)
5.仕事を選ぶ5つの基準(平田の場合)
6.フリーランスにとって進めやすい案件とは? ログ文化・適切なレポートライン・フラットな関係が不可欠
7.最後に、フリーランス協会についてのご案内

1.ミッション型フリーランスとして複数企業の広報を担当

いつもはフリーランス協会代表という立場で、マクロ視点の一般化された話をさせていただくことが多いのですが、今日は個人的な平田の場合のお話をリクエストいただいたのでお付き合いいただければと思います。
私は広報のアドバイザー・プランナーであり、色々な企業の広報担当者としてその会社の名刺を持って働いてきました。あとは、出版のプロデュースや、ケースライティングというビジネススクールで使われる教材の制作なども手掛けてきました。複数の名刺を持つ働き方を10年近くしています。
(私の前に登壇した)ランサーズさん、メリービズさんのお話にあったような、定型化された、社内から切り出されるお仕事をタスクベースで受けているフリーランスの方もいらっしゃると思いますが、私の場合は社内の人材として動くスタイルでした。
私はフリーランスの働き方をタスク型、プロジェクト型、ミッション型と3つに分けて定義しています。タスク型は、あらかじめ決まっている期限や内容・仕様に沿って納品するもの。プロジェクト型は、期限は数ヶ月から数年の中長期で、ある程度決まった内容・スコープの仕事をするもの。私が長らく担ってきたミッション型は、期間に関しては3ヶ月や半年で契約を結びますが、双方事情がない限りは自動更新されるので無期限です。仕事内容は、ミッション/ロールは決まっていますが、例えば、その企業の広報は私以外にいないという状況ですので、経営課題に対して自分で戦略を立てて動く、その中で日々起こることに対応する働きをしていました。

2.フリーランスによるフリーランスのための非営利団体「フリーランス協会」を設立

私個人の話に入る前に、簡単にフリーランス協会の説明をさせていただきます。設立は2017年1月です。設立当初はランサーズさんに賛助企業としてご支援いただいていたので、本日お話をしているこの会場で、設立発表会を致しました。メリービズさんなどには現在も賛助企業として支えていただいています。無料会員が約17,000人、有料で福利厚生などを使っていただいている会員が約3,000人います。フリーランスによるフリーランスのための協会として、協会事務局メンバー全員が自分の仕事を持ちながら複業で協会の活動を手伝っています。私も含めて、ほぼ全員がプロボノ=ボランティアです。そして、フルリモート、プロジェクト型という、かなり実験的な組織運営をしています。今は8つのプロジェクトで活動しています。

3.PR会社勤務からフリーランスデビューを経て、現在はお仕事の8割以上がフリーランス協会での活動

ここからは私個人の話で、先ほどお伝えした働き方に至るまでの背景や理由、フリーランス側のメンタリティが知りたいというリクエストにお答えしていきたいと思います。
まず大学3年生の時に、出来立てホヤホヤの会社に運命を感じて、インターンを経てそのまま入社したのがPR会社のBILCOMです。「24時間戦えますか?」という一世を風靡した言葉のごとく、上司に止められても聞かずに会社に寝泊まりするような仕事人間の生活をしていました。今の広報スキルのベースはここでの経験で培いました。担当クライアント数も多く、50社以上の広報の戦略立案から実働までお任せいただきました。戦略的PRの体系化、社内の研修、マニュアル作成などにも携わっていました。
25歳くらいでお局化して危機感を感じ、研究者になりたいと思ったこともあって、大学に戻りました。留学したり、日本ビジネススクールケース・コンペティション(JBCC)というイベントを立ち上げたりもしました。その後、研究者志望として博士課程まで進んだのですが、イベントの立ち上げや、メディアへの露出をみた恩師から、博士課程を続けながらで良いので、職員としても広報や国際連携の仕事を手伝って欲しいとのお言葉をいただき、業務委託で請けたのがフリーランスデビューでした。フリーランスになりたかった、独立したかった、ではなく成り行きですが、学生と職員の二足の草鞋、別の表現ではパラレルキャリア、が偶発的に始まりました。教材作りや翻訳など、いろいろなお仕事の依頼があり「業務委託であれば、色々なことができて楽しい」と感じてそのままフリーランスになりました。本当は学位を取ってからと思ったのですが、妊娠・出産を機に一度退学。当時は在宅での書き仕事に絞って、専業主婦を満喫していました。

1年半くらい専業主婦をしたあと、子供のエネルギーが手に負えなくなってきたので外に預けようと思い、最初は無認可の保育園に週3回だけ預ける形で社会復帰しました。当時は、4社にて、名刺を持ってその会社の広報として働きました。第2子が生まれてからもカンガルーワークと称して抱っこしながら仕事をしていましたが、その中でフリーランス協会を設立しました。
2017年の協会立ち上げのあとは思いのほか忙しくなり、会社の広報担当として自身が実働する働き方は全部店じまいをしました。今は8割以上がフリーランス協会の仕事。それから、伝説の家政婦・志麻さんという方がいて、我が家の胃袋を支えてくれているのですが、彼女がいないと私のキャリアは成り立たないので恩返しをしたい思いもあり、彼女のマネージャーを、家族を支える感覚で務めています。あとは、ケースライターの仕事や、月1回ミーティング参加するPRアドバイザーの形でのお手伝いをごく一部で担っています。

4.なぜフリーランスなのか、5つの理由(平田の場合)

・Free Soul(与えられた人生、時間を無駄にしたくない)
・ホームがいっぱい
・マネジメント…
・就業時間…
・会社の看板ではなく、自分の名前で生きていきたい

 

フリーランス協会はプロボノですので、ちゃんと報酬をいただくフリーランスとしての仕事と言えるのは3つかもしれないですが、なぜフリーランスなのか?の理由を5つあげてみました。
まずは、「魂が自由」ということ。私は与えられた人生、時間を納得いく使い方をしたい思いがとても強く、誰とどこで何をするかを全部自分で決められることを幸せに感じています。
次に「ホームがいっぱい」とありますが、私はもともと掛け持ちグセがあります。大学時代もサークルを4つ、ゼミを2つ、バイトも2つという、もはや掛け持ち病でした(笑)。心が動いて、やりたいな、手伝いたいな、力になりたいな、と思ったら、1つの会社の1つのミッションだけでなく、職種的にも業界的にも違うことに携われることがとても気に入っています。PR会社時代は「赤字案件だからそれは受けるな」など言われることもありましたが、自由に受けられて、それが全部自分のホームになるのです。これからは、帰属コミュニティが1つに限られず、ポートフォリオで分散させられる時代だと思います。先にお話ししたケースライティングの仕事は10年くらいのお付き合いになります。毎年ある季節になるとお声がかかるので季節労働と言っていますが(笑)、1年に1回会う親戚のような感じで、毎年2、3ヶ月がっつり関わる。そうした帰属を数多く持てることを楽しいと感じています。
続いて「マネジメント…」とありますが、私はマネジメントがとても苦手です。自分が現場で戦って、昨日の自分を更新したいというアスリート的なところがあり、手取り足取り誰かの面倒をみること、モチベートすることはとっても下手です。自分の特性を踏まえたときに、フリーであれば大人のプロ同士のお付き合いなので変な気を使わなくてよいと思っています。
「就業時間…」とあるのは、私の場合はワークとライフがボーダレスであることに関してです。子育てもしておりいつ何があるか分からないなか、自分で自由に仕事を組める。就業時間に縛られないのはストレスフリーです。
最後に、「会社の看板ではなく、自分の名前で生きていきたい」とありますが、私は「誰のものにもならない」というと変かもしれませんが「ゼロから何かを作りたい」「何にも縛られたくない」、という志向がありますので、フリーでいることが向いていると思います。

5.仕事を選ぶ5つの基準(平田の場合)

お仕事を選ぶ基準(平田さんの場合)
No.1 この人の力になりたいか?
No.2 自分が圧倒的なファンになれるか?
No.3 ワクワクするか?
No.4 新たな学び・経験が得られるか?
No.5 期待値を超えられるか?

 

お仕事を選ぶ基準というとちょっと偉そうですが、先ほど(ランサーズの)曽根さんからも会社側も選ばれているとのお話があったように、フリーランス側もいろいろな視点で仕事を取捨選択しており、少し参考になればと思います。人によって優先順位や基準は異なるので、あくまで平田の場合はとして聞いて頂ければと思います。

まず「この人の力になりたいか?」はとても大きな基準です。人生を無駄にしたくないとお伝えしましたが、その人の力になることで社会がどれだけ良くなるかに私はとても強い関心を持っています。例えばメリービズさんの仕事に関わっていたことが先ほど話に出ていましたが、(メリービズの)工藤さんはとても良い方ですし、自分に出来ることがあればぜひ力になりたいといつも思っています。逆に、実際にお付き合いして「この人にはちょっと共感できない」とか「人間としてどうなんだろう」と感じると、その仕事自体に強い罪悪感を感じてしまいます。特に広報は、「その人、会社は素晴らしいですよ」と世の中に伝える立場であり、嘘をついている気持ちになってしまうので、この基準はとても重要です。
近いところですが、「自分が圧倒的にファンになれるか?」とも自答しています。広報は、自分がファンでないと面白いくらい結果が出ないものです。

あとは、「ワクワクするか?」。エキサイティングで新しいことに挑戦できるか、一緒に仕事をする方々の雰囲気はどうかが気になります。そして、「新たな学び・経験が得られるか?」。その仕事を通じて成長できるかも選択の基準です
最後に「期待値を超えられるか?」。自分の得意なことと違うことを相談され、お引き受けしても、期待に添えなかったら申し訳ないので、結果が出せそうかは気にしています。自分じゃないほうがいいとか、自分じゃなくてもいいと思った場合は、別の方に代わってもらうようにこちらから提案する場合もあります。

6.フリーランスにとって進めやすい案件とは? ログ文化・適切なレポートライン・フラットな関係が不可欠

レポートライン

進めやすい案件と進めにくい案件があるのではとのリクエストもいただきましたので、3つ考えてきました。
1つ目は、ログ文化があることです。リモート中心で仕事に関わるフリーランスにとってとても重要な点で、「≒リモートワークを受け入れる体制がある」と言えます。例えば、ミーティングの議事録は必ず残す、会話や議論がチャットなどでオープンになっている、資料やドキュメントが共有フォルダに整理・保存されている、などです。以前にお手伝いしていた会社では、2週間に1回定例会に出席し、それ以外はリモートでお仕事をしていましたが、口頭での会話で方針変更があってもご報告をいただけず、定例会で決まったことを2週間かけて仕上げてきたが、前提が変わっていてやり直し…ということがありました。お力になりにくい、結果を出しにくい案件でした。スピード感をもって成長している会社であれば、フリーランスのためだけでなく、生産性を上げていくという意味でも、ログ文化は大事なポイントだと思います。
2つ目は、レポートラインです。タスク型、プロジェクト型、ミッション型の仕事形態により適したレポートラインは異なりますが、私のようなミッション型やプロジェクト型で関わるフリーランスの場合は、点ではなく面で繋がるレポートラインがパフォーマンスしやすいと思います。タスク型のお仕事で一般的なレポートラインは、1人の担当者がアサインメントから日頃の連絡までを任せられている、点で繋がるレポートラインです。得られる情報量が限られたり、担当者が忙しいとコミュニケーションがストップしたりして、仕事が進められなくなるデメリットがあります。プロジェクト型のお仕事に多いレポートラインはチームメンバー型です。プロジェクトメンバーの1人としてアサインされチームメンバーとやりとりがあるので、情報が滞ったり仕事がストップしたりはしませんが、プロジェクト以外の「その会社で何が起こっているか」といった全体像はわかりづらいです。ミッション型のお仕事の場合、望ましいのはインサイダー型のレポートラインです。会社側のフリーランス担当者に各部署のキーマンとなる方々を紹介してもらい、直接やりとりできる関係を築くことにより、結果を出すために、能動的・主体的に動き回れるようになります。
3つ目のフラットが一番とは、下請け扱いされるのもよくないですが、お客様扱いされるのも進めにくいということです。社内の情報へのアクセスについては、もちろんNDAを結んでいますので、なるべくフラットにしていただきたいです。そして、お互いの関係性についてもフラットに、良いことも悪いことも遠慮せずにフィードバックしていただけると、フリーランスにとっては成長にも繋がりますし、案件も進めやすくなります。

■フリーランスのパフォーマンス最大化のために大切なこと
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フリーランスのパフォーマンス最大化のためのポイントとしてお伝えしたいのは、上流の話を労を惜しまず伝えていただきたいということです。タスク型、プロジェクト型のお仕事では、どうしても事務的で限定的な話に終始しがちですが、いずれの仕事形態であっても、会社のビジョンや方向性、課題など上流の話をきちんと伝えていただくことによって、フリーランスの側はより強くエンゲージできますので、ぜひ心がけていただきたいと思います。

7.最後に、フリーランス協会についてのご案内

フリーランス協会

最後に、フリーランス協会についてご案内させていただきます。フリーランス協会では人材マッチングは行っておりません。その代わり、私たちはフリーランス活用のガイダンスを公開したり、フリーランス協会会員のデータベースを検索・コンタクトできるよう解放したりしています。また、サポートセンターも設けております。いずれも無料で使えるものですので、関心のある方は是非ご活用ください。以上、ご静聴ありがとうございました。

Co-Growthでは、今後も新しい発見や実りあるセミナーを開催していきます。
開催情報は随時Facebookに掲載していきますので、ぜひ弊社ページをフォローしていただき、最新情報をチェックしてみてください。
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●▲■ シリーズセミナー「早期戦力化の新潮流」とは社会的なニーズが益々高まっている「新人・若手の早期戦力化」を対象領域とし、毎回「発見」のある新しい取り組みを、感度の高いプロフェッショナルと共有していくことを目的としています。 1~2ヵ月に1度、刺激を得られ、つながりが広がる楽しい場にしてゆきたいと考えています。

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フリーランス/独立プロフェッショナルの戦力化【パネルディスカッション】

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