Introduction
千葉県船橋市を中心に不動産仲介業と注文住宅を手掛けている株式会社アイユニット・コーポレーション。 2006年の設立以降、2013年には5億円であった売上高が2021年には30億円に到達し、急速な成長を続けています。
同社は、会社が成長するには、新卒の勢いのある成長力が必要と考え、
新卒・未経験者を積極的に採用し、早期即戦力化する取り組みに力を注いでいます。
一人ひとりのロートレ(同社では、“ロープレ”をロープレ・トレーニングを略した“ロートレ”と呼んでいます)
をしっかり見て営業力を上げていく丁寧な育成により、2020年4月入社の新卒3名は、
全員、同年7月から翌年6月の年間売り上げが粗利で3,000万円達成。
2021年4月入社の新卒13名は、
4月から6月の3ヶ月間で10名が契約を獲得(2021年8月時点)。
新卒社員の入社後も全体の契約率を落とすことなく、
むしろ18.2%(2020年7-12月期)から19.8%(2021年1-6月期)に上がる結果となりました。
今回は、代表取締役社長石橋直和さんと取締役売買事業部長矢野暁さんに、 新卒採用と人材育成にかける想い、リフレクトルを活用したロートレの取り組み、得られた成果、 運用上のポイントなどについてお話を伺いました。
▶石橋直和社長プロフィール
1980 年、江戸川区南葛西に生まれる。21 歳までプロの競輪選手を目指し、
一次試験は通過したものの、惜しくも二次試験に受からず、不動産業を志す。
しかし、新卒入社した株式会社オープンハウスでは1軒も売ることができず1年で辞職。しばらくアルバイトを転々とする。
その後、結婚を機に不動産業界へのリベンジを決意。
新しい会社では、家族・チーム・会社・お客様のために、という利他心で仕事に取り組み、
入社3年目で社内 No.1 の成績を収める。 そこで、もっと多くの仲間と目的・目標を達成し、
喜びを分かち合える会社を創りたいと、2006 年に(株)アイ・ユニットホーム(現(株)アイ・ユニットコーポレーション)を創業。
方向性の合わない社員との別れなど苦しい時期もあったが、全従業員の幸せを追求し、
やりがいをもって働ける環境づくりを第一に考える経営で、創業15年で売上高 30億円超の企業に成長させた。
▶矢野暁部長プロフィール
1984年、大阪府枚方市に生まれる。
学生時代は航空整備士を目指し航空整備専門学校を卒業。
しかし在学中に航空整備の仕事にやりがいを見出せず、卒業後、
業界大手日焼けサロンのエリアマネージャーやキューピーマヨネーズのトラックドライバーなど、
数多くの仕事を転々とする。
その後、頑張れば頑張った分だけ評価される不動産業界に魅力を感じ、
2008年に現(株)アイ・ユニットコーポレーションに入社。常にNO1営業マンを目指し、
社内で5年連続NO1営業マンとなる。全国のピタットハウスランキングでも数多く金賞を受賞。2021年に取締役に就任。
Index
1. 新卒採用と人材育成にかける想い。一人ひとりを丁寧に育て、堅実に利益を出せる社員を数多く育てたい
弊社は、新卒・未経験者を採用し、しっかりと育成して早期に即戦力化する取り組みをしています。
会社が成長し続けるには新卒社員のパワーをもらうことが必要です。
下からの突き上げがあると、上も現状に甘んじることなく成長しようと努力する。
結果として、会社は強くなり、成長を続けられると考えています。新卒を育てることには大変さもありますが、
新卒はまっさらで伸び代があり、変わっていく様子がはっきりと見られますので、大いにやりがいを感じています。
営業社員の成長というと売り上げの数字を追いがちですが、私は、数字はあくまでも結果であり、
大切なのは営業の中身・質=営業力だと捉えています。お客様との対話の中身・質が高ければ、お声かけくださったお客様の期待に添うことができ、
それは契約という形にまとまり、それが数字になります。
創業当時は1店舗のみでしたので、私が接客から契約決済するまでの姿を社員たちに1から10まで全て見せることができていました。
その姿を見て学び、社員たちは自然とできるようになっていきました。しかし、会社が大きくなり人が増えると、
見せることができなくなっていきました。その中で、契約がなかなか取れない社員を見て、
「みんな頑張っている。ゼロ契(一ヶ月間契約ゼロ)を取りたくて取る人はいないのに、取らせてしまっている」と気がつき、
ハッとしました。経営者として、社員の営業力を上げることができていないことに、強く責任を感じました。
このことがしっかりと育成に取り組もうと決めるきっかけとなりました。
育成にあたっては、できる営業社員の取り組みを標準化し、
属人性のない形でスキルをしっかりと下の世代に繋いでいくことを意識し、
年間5,000〜6,000万円の利益を出せる一握りのトップセールスを生み出すよりも、
年間3,000〜4,000万円の利益を堅実に出せる営業社員を数多く育てることを目指しています。
2. リフレクトルの導入によりロートレが効率化。さらに、スキルが見える化し、大切なお客様の元に社員を送り出す際の「安心感を買う」ことができた
(石橋社長) 社員の営業力を着実に上げるには、 一人ひとりのロートレを、
力のある人がしっかりと見ていく以外に方法はないと思っています。
当初は、私自身が一人ひとりと対面してロートレを行い、スキルチェックをしていました。
各人の営業内容を具体的に見られると、愕然とすることもあります。それでも一人ひとりの実情が分かるからこそ、
成長を後押しすることができます。私なりにかなりの時間を費やしていましたが、社員が増えてくるなか、
「社長の時間が空いていないことが、スキル向上のボトルネックになっています」と言われることも出てきました。
まさにその状況にあり、どうにかしなければと思っている時にリフレクトルに出会いました。
汎用的なファイル・動画共有サービスなどに動画を上げてロートレを確認する取り組みに近いですが、
リフレクトルには様々な機能が揃っているので非常に使いやすいと感じています。
リフレクトルを活用することで、まずは矢野部長がロートレ動画へのフィードバックを行い、
そのフィードバックを私が確認する運用となり、私との予定が合わずに先に進められない問題は解消されました。
そして、社員がどれくらいロートレに取り組んでいるか、どれくらいスキルが上がったかを見える化できるようになりました。
スキルが見える化できていれば、入社して間もない社員でも、大切なお客様のもとへ安心して送り出せます。リフレクトル導入によって、
「安心感を買う」ことができたと思っています。
コラム : リフレクトルを活用したロートレの日々の運用
(矢野部長)ロートレとそのフィードバックは必ず毎日行うことになっています。
毎日18時半までに営業社員がロートレ動画を撮影してリフレクトルにアップします。
翌日10時までに上長が営業社員の動画に対してフィードバックを入力。
同日12時までに営業社員は上長からのフィードバックの内容を確認して振り返りのコメントを入力します。
上記に並行して、売買事業部長である私が全てのロートレ動画を確認しフィードバックを入力しています。
社長は、①ロートレのカリキュラム設計、②フィードバックコメントの確認、③ペナルティの判断を行なっています。
ロートレの肝となるカリキュラムは、弊社の営業マニュアルをベースに社長自らが設計しています。
そして、各人のロートレ動画に対して私が入力したフィードバックコメントの確認も行なっています。
社長はロートレ動画の全てを見るのでなく、フィードバック対象部分およびその前後とポイントを絞って見られるので、
少ない労力で全体の成長を確認できています。また、ペナルティの判断も社長が行います。
一連の流れのうち1つでも滞れば、連帯責任となり全員にペナルティが発生します。
営業社員は翌日にロートレを2回実施。上長と私は通常の倍量の動画にフィードバックを入れることになります。
開始当初は動画のアップを忘れることがありましたが、ペナルティの導入により改善されました。
このような厳しいルールもありますが、締め付けるばかりでは嫌になりますので、
例えばテストに受からなかった人に対しては「次の機会にはこうしてみよう」と明るく伝えるなど、
前向きに楽しく取り組んでもらえるように心掛けています。
(石橋社長)はじめはネガティブな反応もありましたが、
段々と「ロートレで実践したこのセリフを本番で言うことができました」といった声が聞かれるようになり、
皆、今では楽しんで取り組んでいると感じています。
3. リフレクトルを活用して得られた4つの成果
(矢野部長)2021年2月にリフレクトルを導入し、得られた成果は主に次の4点です。
① 新卒社員の早期即戦力化
新卒社員の成長スピードはリフレクトル導入前と比べて約1年短縮された感触です。 実際に数字の上でも成果が見られています。2020年4月入社の新卒3名は、 全員、同年7月から2021年6月までの年間売上が粗利で3,000万円を達成。 2021年4月入社の新卒13名は、同年4月から6月の3ヶ月間で10名が契約を獲得(2021年8月時点)。 2 本、3 本と続けて契約を獲得している人もいます。さらに、 多くの新入社員が加わることで下降するものと見込んでいた会社の面談対契約率についても、 リフレクトル導入前の2020年7- 12月期が18.2%(契約 85 件/面談468件)であったところ、 リフレクトル導入後の2021年1-6月期は 19.8%(契約97件/面談489件)と約2%上昇する結果となりました。 リフレクトルを活用したロートレによる早期戦力化の成果が出ていると感じます。
② ナレッジの蓄積
私がロートレ動画を確認していく中で特に優秀と感じる動画について、 皆にわかるように星マークのタグをつけ、手本動画として蓄積しています。 手本動画を見てからロートレを行うことで、実践の正確性が高まりました。 また、あるべき姿をあらかじめイメージすることができるため、実践のハードルを下げる効果もあります。
③ 管理職の営業レベルの向上
管理職が部下のロートレに対してフィードバックする際、 「全体的によかった」や「なんとなく違う」という指摘では、 フィードバックされる側に良い点と改善点をわかりやすく伝えることができません。 「ここはマニュアルにある通り、●●の点を押さえて話せていて良かった」や 「ここはマニュアルにあるけれども、●●と話すことができればより良くなるでしょう」という指摘であれば伝わります。 このように的確なフィードバックを行うためには、営業マニュアルを細部まで徹底して理解しておく必要があり、 結果として管理職の営業レベルの向上につながっています。
④ 各営業社員のスキルの見える化
リフレクトルのレポート機能では、全社員のロートレの取り組み状況を一覧で確認することができます。 管理職が、ある人はどの項目まで合格して順調に進んでいる、ある人はこの項目でつまずいて足踏みしているなどと、 きめ細やかに一人ひとりの状況を把握できます。また、各人のスキルの向上度を確認できるようになり、スキルの見える化が叶いました。
運用上のポイント1:自社の営業手法を確立した上でカリキュラムを整える
(石橋社長)リフレクトルで行うロートレのカリキュラムのベースにあるのは、私が営業時代に実践していた、 初回問い合わせから契約までの手法をまとめた150ページにわたる営業マニュアルです。 管理職になる際、営業マンとしてのスキルを忘れてはいけないという想いから作りました。 もともと私は小心者で、営業についても素質に恵まれて成績を出せたタイプではないので、同じタイプの人でもストレスなく営業できるマニュアルになっています。 リフレクトル導入前は、営業マニュアルの内容を実践できるようになっているかを、 スキルチェックシートという紙1枚を使い、確認していました。リフレクトル導入にあたり、 スキルチェックシートの内容を50項目ほどに細分化し、内容を深化し、ロートレのカリキュラムへと作り変えました。 「デジタル化に成功するためには、まずアナログでしっかりできていなければならない」という話を以前にセミナーで聞いたことがありますが、 確かに一足飛びにデジタル化しようとしても上手くいかなかったと思います。 我々は、スキルチェックシートの紙がボロボロになるまでアナログで営業手法を追求してきたからこそ、リフレクトルの取り組みで成果を出せたのだと思います。
運用上のポイント2:短く実践を毎日続けることを習慣化!1-2分のロートレとフィードバックを毎日積み重ねる
(矢野部長)ロートレのカリキュラムは全て1-2分で実践できるように設計されています。 仮に6分かかる内容であれば、あえて2分×3本に分けてロートレを行うことにしています。 フィードバックされる側は指摘が多すぎると一度で改善しきれませんし、 フィードバックする側も動画が長いとフィードバック業務に時間を取られてしまいます。 とにかく短く毎日を習慣化するのが、双方にとって理想的だと思います。 現在は、1-2分のロートレ動画に対し良い点と改善点を1つずつ指摘する形で定着しています。
運用上のポイント3:会社の方針として経営計画書に明確に示し、全社一丸となって取り組む
(石橋社長)リフレクトルに限らず、新しい取り組みを始める際は、
社長が率先して取り入れたものの社内にうまく浸透しきらず、頓挫してしまうことがあります。
そうならないためには、幹部から営業社員まで全社を巻き込んで、一緒に取り組みを進めていくことが大切だと思います。
(矢野部長)弊社では中期経営計画書を”教科書”と呼んでいます。
いわゆる一般的な中期経営計画書は売上や利益目標など主に数字が書かれたのものですが、
弊社のものはスキルやマインドについても書かれており、会社の方針、考え方、目的、
目標を全社員に明確に示す内容となっています。毎日朝晩、一人ずつ、心に響いた部分をランダムに紹介し、
それに対して誰かがフィードバックする慣習があり、紹介した部分には線を引いて重ならないように続けています。
「忙しい」と言う人がいれば、「忙しいと言ってはいけないんですよ。心を亡くすと書いて忙しいと言うんですって。
何ページにあります」と誰かが返すほど、皆、しっかりと読み込んでいます。
そして、中期経営計画書には、売買事業部の5つの柱の1つとしてリフレクトルで行うロートレについても書かれており、
全社を挙げての取り組みであると皆が認識しています。
運用上のポイント4:経験は財産。上の世代の経験を下の世代へと繋いでいく組織文化をつくる
(石橋社長)
会社にとって社員の経験は何にも勝る財産ですから、
上の世代の我々が経験してきた良いこと・悪いことは全て下の世代に伝えていくことが大切であると常にメッセージを発し、
「人を育てる文化」づくりに取り組んでいます。そして、下の世代にも経験を重ねてもらい、
さらに次の世代へと脈々と繋いでいってほしいと願っています。
私は、小学生の頃に周囲から教師になるよう勧められていたくらい、
もともと人にものを教えるのが好きでもあり、人を育てることに非常に価値があると考えています。
(矢野部長)弊社では、一連の業務を、営業社員が行う案内業務、管理職が行う接客業務、
その後の決済業務の3つに分ける分業制をとっていることから、営業社員がご案内したお客様は管理職が引き継ぐ体制になっています。
必然的に営業社員と管理職は一心同体で、営業社員は管理職からの指導を受けながら日々の現場に立っています。
そうやって教えられて育ってきた社員たちは、「先輩に数字を作ってもらったのだから、
今度は自分が後輩の数字を作ってあげなければ」という感覚を持っており、
上の立場になれば教えてあげるのが自然な流れとしてあります。
また、自分だけ売れればよいと競い合うのではなく、チームで達成するのを好む傾向にある点も、育成がうまくいく要因だと思います。
4. これから実現したいこと
(石橋社長)力のある人からのフィードバックを受けて、
営業社員たちは目に見えて力をつけてきていますので、当面はこの取り組みをしっかり続けていきたいです。
そして、今後はフィードバックができる人を育てていきたいと考えています。
現状では、精度の高いフィードバックができる矢野部長が、
毎日40本、月700本のロートレ動画を確認しており、負担がかかっています。
ロートレの手本動画を蓄積するのと同様に、矢野部長のフィードバックを手本として蓄積し、
それを共有することで、矢野部長と同じ水準のフィードバックができる人を育て、業務を引き継げるようにしたいと思っています。