2019年11月26日

メリービズ㈱ 工藤博樹氏:ビジネスを楽しく、個性や能力が生かせる世の中を – 早期戦力化の新潮流#2・レポート

Co-Growth社が主催するシリーズセミナー「早期戦力化の新潮流」では、 先進的な組織がいかにして人材の持つ力を最大限に引き出しているかをテーマに、有識者・実践者に登壇をお願いしています。 第2回目のテーマは、年々社会的ニーズや市場が拡大している「フリーランス・独立プロフェッショナルの戦力化」。本レポートは、登壇者のお一人、メリービズ株式会社 代表取締役 工藤博樹氏の講演の記録です。

メリービズ 工藤さん

◆メリービズ株式会社 工藤 博樹氏

メリービズ株式会社 代表取締役社長。カナダ生まれ。シンガポール、フランスなど海外で幼少期を過ごし、小学生の時に帰国。2000年、東京工業大学修士課程修了。2000-08年、日本IBMプロジェクトマネージャー。2008年、INSEAD MBA取得。CVAにて大手企業向け経営戦略コンサルティング。2010年、Locondo.jp立ち上げ。自身や周囲の起業家たちの苦労から事務作業を楽にできるサービスを展開したいと考え、2011年にリブ株式会社(現在はメリービズ株式会社)で経理サービスの「メリービズ」を開始。

目次

1.得意なこと、好きなこと「だけ」をする働き方で、ビジネスを楽しくしたい!
2.メリービズのサービス提供のポイントは2つ。1つは業務フローをしっかり整理すること、2つ目はチームを作ることである
3.フリーランスの活用失敗を経て気を付けていること。フリーランスと長い関係性を持つためには「長続きする仕組み、チームを作る」ことが必要

1.得意なこと、好きなこと「だけ」をする働き方で、ビジネスを楽しくしたい!

私たちメリービズ株式会社は、フリーランスを活用して経理サービスを提供している会社です。現にフリーランスの方々と数多く仕事をしているため、その実体験も合わせてお話ししたいと思います。さらに、本日のイベントのテーマが独立プロフェッショナルですので、プロ人材と一緒に仕事を進めていく方法についてもお話しできればと思います。

私たちは「バーチャル経理アシスタント」というサービスを提供しており、そこでは登録されている750名のリモートワーカー、フリーランスの方々と一緒に、企業の経理業務を支える経理部を作っています。なぜこのサービスを行っているかといえば、先ほどランサーズの曽根さんの話にもありましたが、満員電車やサービス残業など働く上で楽しくないことが往々にしてある中で、そうした世の中を変えていきたいと思っているからです。

創業者の自分個人のこともありますが、我が子が成長して働き出す時にどのような世の中になっているかと考えると、これから色々なことを変えていかなければ、あまり明るくないと感じました。私の周囲でも、仕事が大変で体調を崩す人たちが結構いるため、非常に勿体無いと思っています。皆それぞれに個性があり、好きなことや得意なことがあるはずなので、それをもっと生かす形で仕事ができれば、こうした問題は減らせるのではないかと思っています。

具体的に言うと、例えば営業の方で人に会って課題を聞くのはとても好きですが、報告書や資料の作成は好きではなく苦手という方がいます。一方で、書類はしっかりミスなく作成できますが、人に会うことは正直好きではない方もいます。これは、どちらが良い悪いということではなく個性です。それぞれの得意と不得意を交換すれば、自分の得意なことで仕事を固められます。これまで世の中は、産業革命を含めて分業を進めることで発展してきました。今はインターネットがこれだけ普及しているので、さらに細かいレベルで分業できるようになっていくのではないでしょうか。そうした個性を生かせる世の中を私たちは模索しています。

メリービズの「メリー」は、ハッピーと同義で「楽しく」を意味しており、「ビズ」は「ビジネス」の略です。ビジョンとして「ビジネスを楽しく!」を掲げ、「ビジネスインフラを創る」ことをミッションとしています。

現在のサービスは経理業務がメインですが、今後はバックオフィスに関するサービスも色々展開していきたいと思っています。例えば、生活インフラには電気・水道・ガスがあると思いますが、朝起きて水道の蛇口をひねりコーヒーなどを沸かす時に、もし水が出なかったらどうするかと考える人はあまりいないはずです。これらのインフラは、生活の一部として当たり前に存在しているからです。では、それらがない時代は何が起きていたかといえば、近くの川や井戸から水を汲み、生活用水を確保するという日課がありました。その後、水道インフラが整備されることでその日課から解放され、我々の生活は楽で便利になったと思います。現代のビジネスに置き換えてみると、日本では300万社、世界では1億社ほどの会社が存在しますが、誰かしらが経理・労務・法務を担っている現実があります。これらをまとめて引き受けるサービスがあれば、実務者をその業務から離して、より本業に集中できる、事業を伸ばすことに集中できる環境が作れます。メリービズは、そんな得意なことや好きなことを生かせる世の中を作っていくことを目指しています。

 

2.メリービズのサービス提供のポイントは2つ。1つは業務フローをしっかり整理すること、2つ目はチームを作ることである

私たちのサービス概要をお伝えすると、現在750名ほどの経理のプロの方々が登録されており、お客様が経理業務を私たちに依頼してくださいます。特に最近は人手不足で、派遣会社に依頼しても適任者が見つからなかったり、待たされたりとお困りの企業が多いので、色々な依頼をいただきます。依頼内容は、例えば経費精算や取引先への請求書発行の代行など、様々な事務仕事があります。その内容に合わせて、私たちが専属のチームを作って業務に当たらせていただいています。お客様は、上場企業をはじめ、なかなか人材を確保できない中小企業も多く、都内や地方も含めて色々な企業様にご利用いただいています。

サービス提供のうえで、私たちが工夫していることが二つあります。この辺りもフリーランスを活用するにあたってのポイントだと思います。一つ目は、私たちは「経理エンジニアリング」と呼んでいますが、業務をきちんと整理することです。ご自身の仕事の中をよく見ると、外注できるところと出来ないところがあるはずです。そもそも、バックオフィスの業務自体が、あまり整理されていなかったり、ドキュメントは何もなく周りの人から口頭伝承されたりというケースが多く見られます。依頼された企業の経理部でも、業務フロー全体を把握している人が誰もいないケースがありました。それを私たちがコンサルを用意してヒアリングし、細かく整理していきます。多くの業務が、属人的・感覚的であったりするので、ルールを含めて全て整理します。ここをしっかり整理できなければ、お客様からお仕事をいただいて私たちが一生懸命遂行したところで、期待値が合いません。前回のものと違うと言われたとしても、以前のやり方やルールが分からないため永遠に話が合わないわけです。

工夫している点のもう一つは、チームをつくることです。実は経理には色々な能力が必要であり、僕も仕事を進めながらだんだん分かってきたため、自分の反省を含めてお伝えします。経理の仕事は、単に仕訳や簿記の知識があればできるかというと、実はそうではありません。最近は色々なITツールを使うため、ITツールを理解して使いこなせたり、様々な部署とコミュニケーションを取るため、コミュニケーション能力が必要であったりします。例えば、営業を怒らせずに、早く請求書を下さいと言わなければいけないのです(笑)

理想を言えば、必要な能力を兼ね備えたチームを用意することですが、中小企業では予算的に経理担当一人分しか雇えないことがあります。そこで私たちであれば、月に5時間、10時間、2時間など、必要な人数を適切な作業量(時間)で用意することができるため、人材のAWS(Amazon Web Services)ではありませんが、高度な仕事や大量な仕事に関してもいいチームを作ることができます。

サービスを提供する上では、以上の「業務フローを整理すること」、「チームを作ること」の2つを大事にしています。

 

3.フリーランスの活用失敗を経て気を付けていること。フリーランスと長い関係性を持つためには「長続きする仕組み、チームを作る」ことが必要

私たちメリービズも、スタートアップ企業という立場からなかなか人を採用できなかった時期があり、早々とフリーランスの方々と仕事を始めていました。そこで優秀な方が見つかると、どうしても色々と依頼したくなり、特定の方に対してあれもこれもと沢山仕事を依頼していたことがありました。その方とは3年ほど一緒に仕事を行い、その間素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれたのですが、結局辞めることになりました。怒って辞めたわけではなく、他の仕事がしたいという理由で辞めたのですが、私たちとしてはとても反省が残りました。フリーランスの方であっても、その方のキャリアやライフプランがある中で、その点をしっかり考えてこなかったのです。そして、その方が急に辞めると全員の仕事が回らない状況になっており、その方一人にかなり依存してしまっていた反省がありました。

現在も私たちの会社の中では、色々な部門でフリーランスの方を活用させていただいており、業務委託という形態をとっています。そこで今とても気をつけていることは、社員となるべく同じような形で一緒に仕事をするということです。都内であれば、フリーランスの方が仕事で寄った際に話ができるスペースをオフィスに用意したり、機会があればなるべく顔を合わせたり、イベントをしたり、人間臭いのですが社員と同じ形をとって仕事をしています。

その背景には、信頼関係ができないと、ちょっとしたことがなかなか話せないという現実があります。この仕事は少ししんどいなと思っても、顔を合わせたことがない人に対してはなかなか相談できません。そのため、普段から色々な雑談を含めて顔を合わせ、この人なら安心して仕事が受けられるという信頼感や、ちょっとしたことなら聞くことができる関係性を一生懸命作っています。これは際限なく取り組めるため、完成しているとは全く思いませんが、とても大事にしています。

経理分野で登録されているフリーランス750名に関しては、チームを大事にしています。経理では93パーセントが女性のため、その中には子供がいらっしゃる方々も多くいます。すると当たり前ですが、夏休みなどの期間は仕事を休んで、子供を連れて遊びに行きたくなります。こうした状況から、人(個人)に依存してしまうと仕事が進まなくなってしまうため、チームを作らなければいけないと思いました。フリーランスという個人のプロが活躍するには、しっかり守るためのサポートチームも必要です。例えば、テニス選手であれば、コーチ、マッサージ、フィジカル、スポンサー周りを折衝する人など、各分野で優秀なサポーターがいるからこそプロとして試合に集中できるという現実があります。私たちも経理のプロを多く集めているため、彼女たち彼らが仕事に集中できる環境を用意しなければいけないと思っています。具体的には、私たちのサポートもありますが、同じ仕事をする場合は、基本的に必ず2名体制で仕事ができるようにしています。その方が体調不良や天災など、不測の事態で仕事ができない環境になった時でも、なんとしても自分がやらなければいけない状況にはならず、この時だけ依頼できる人が存在する形をとることで、プレッシャーを受けずに長く仕事ができるような環境を作らせてもらっています。

まとめですが、「プロに仕事を依頼するためには、依頼側もプロでないといけない」と思っています。相手の状況への配慮やサポートはもちろんですが、業務全体を整理できてない状況で依頼をしても決して上手くいかないので、まずは自分たちできちんと業務内容を整理してから、仕事をお願いしています。そして、フリーランスの方と長い関係性を持ちたいのであれば、「長続きする仕組みと、チームを作る」ことが大切です。

メリービズはこうした形で、自分たちでも色々と実験しながら、昔ながらの企業ではなくコミュニティ型の経営をしており、正社員を含めて様々な方々が、濃淡ある形で仕事に関わってくださっています。色々な方々をうまく巻き込んで、私たちの社会観を実現していきたいと思っています。コミュニティ型組織はまだまだ模索中ですが、皆にとって良い環境、良い仕事、良いキャリアを作れたらと思っています。ありがとうございました。

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●▲■ シリーズセミナー「早期戦力化の新潮流」とは社会的なニーズが益々高まっている「新人・若手の早期戦力化」を対象領域とし、毎回「発見」のある新しい取り組みを、感度の高いプロフェッショナルと共有していくことを目的としています。 1~2ヵ月に1度、刺激を得られ、つながりが広がる楽しい場にしてゆきたいと考えています。

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