2019年9月20日

「石川善樹氏 : Well being(ウェルビーイング)という視点 ~ 良い組織とは何か?」 – 早期戦力化の新潮流・レポート

Co-Growth社が主催するシリーズセミナー「早期戦力化の新潮流」では、 先進的な組織がいかにして人材の持つ力を最大限に引き出しているかをテーマに、有識者・実践者に登壇をお願いしています。 第1回目は「エンゲージメント・サーベイの活用」と題し、「エンゲージメント」向上の切り口から社員の戦力化について考える時間でした。本レポートは登壇者のお一人、石川善樹氏が「良い組織とは何か?~Well-being(ウェルビーイング)という視点~」の題で、「Well-being(ウェルビーイング)」について、講演してくださった記録です。

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石川善樹氏 予防医学研究者、博士(医学)
1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。(株)Campus for H共同創業者「人がよりよく生きる(Well-being)とは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学など。
[Twitter] @ishikun3
[HP] https://yoshikiishikawa.com/

目次

1.研究者は「共通項」を見つけてモデル化する。「良い組織」に共通した要因が「Well-being」
2.Well-beingは「評価」と「体験」から成る。「評価」を高めるには、一日の終わりに印象に残ったことを振り返ると良い。「体験」は、職場で「敬意をもって接された」「笑った」の2つが大切。
3.成果を上げる国/組織には「信頼」の文化がある。「信頼」は、相手を一人の人として気遣う問いかけを通して育まれる。

研究者は「共通項」を見つけてモデル化する。
「良い組織」に共通した要因が「Well-being」

僕は研究者ですが、研究者の仕事とは、共通項を見つけることです。今日は「良い組織とは何か」について見つけた共通点の話をしたいと思います。キーワードが「Well-being」です。

本論に入る前に、研究者の物事の考え方の話をさせてください。最初の一歩は現象の発見です。例えば(今回の登壇者の一者である)リブ・コンサルティングさんのようにエンゲージメントの高い組織があれば、どういう特徴があるのかを探します。要は面白いものを見つけにいきます。また別の例ですが、僕がもの凄く面白いと思った研究に「VERY HAPPY PEOPLE」というものがあります。単なるHAPPYではなく「VERY」にHAPPYな人達を探し出し、その特徴を見ていきました。最初は、収入が高いとか、良い会社に勤めていることが効いてくるだろうとの仮説があったのですが、そこで分かった共通項は、彼ら/彼女らには例外なく「よい友達がいる」ということでした。
次にそうした現象を見て、モデルをつくります。モデルとは、「最小の情報で最大を説明する」ことです。人や組織はそれぞれ違うので、1つのモデルで全てを説明することはできません。だから「最小」の情報で「最大」、すなわちなるべく多くのことを説明するモデルをつくりたい。例えば、生産性の高い組織を説明するときに、1,000も要因があっては困ります。多くて3つ、できれば1つ、なるべく最小の情報で多くを説明するモデルをつくります。そしてモデルが出来た後は、モデルに当てはまらない現象を探しにいきます。例えばよい友達がいなくても、HAPPYな人はいる。そうした人についても説明できるモデルを探し、モデルと現象を行ったり来たりすることで研究を発展させてゆきます。
model&phenomenon

「モデル」についてもう少し見ていきましょう。組織にとって「いいこと」はたくさんあります。健康であるとか、生産性が高いとか、イノベイティブであるとか。これらの「いいこと」を何かの要因で説明したい。その要因はいくつかの構成要素から成っています。そしてこれらの要因を変える「レバー」を個人/マネージャー/組織全体それぞれで出来ることとして見つけることで組織をより良くしていきたい。そうした様々なモデルを、これまでも私たち研究者は提案してきました。

about_model

この中でも、重要なのは真ん中に記している「要因」です。良い要因には3つの条件があります。第一に「測定可能」なこと。測定できないと、改善しようがないですから。測定できないものは研究の対象にはなりません。二つ目は「操作可能」であること。どれだけ測定可能でも変えられなければ意味がないです。例えば人の「性格」は測定はできますが、帰ることは困難です。三つ目が「広範囲な影響力」を持つこと。例えばこのチャートに記した例だと、「健康」にだけ或いは「生産性」にだけ効いても困るのです。組織にとって「いいこと」が沢山ある中、それらを一気に動かせる要因を選びたい。古い例えですが、北斗の拳でいう秘孔を突くようなものです(笑)。

さて、「良い組織」に共通する要因は何か。これまでの研究を総括すると、キーワードは「Well-being」です。

Well-beingは「評価」と「体験」から成る。「評価」を高めるには、一日の終わりに印象に残ったことを振り返ると良い。「体験」は、職場で「敬意をもって接された」「笑った」の2つが大切。

「Well-being」は、「評価」と「体験」という2つの構成要素から成ります。まず、心理学の二十世紀の大発見の1つに「評価と体験は違う」ことがあります。例えば、デートをしたとしましょう。昼からデートをして、めちゃくめちゃ楽しい一日の体験をした。だけど最後の2分間で大喧嘩して別れたら、そのデートは最悪だったと評価されます。つまり人間は、全ての体験を等しく評価していない。特に、最後に何が起きたのかが凄く大事です。だから、一日の仕事をどう終えるのかが、めちゃくちゃ重要です。

そして評価は、例えば梯子のようなもので測ります。「最高の職場を10点、最低の職場を0点とすると、あなたの今の職場は何点ですか?」と聞いたりします。これは最近ではeNPS(Employee Net Promoter Score)と言われたりします。

さて、評価を高めるために、まずやってはダメな仕事の終え方は何か。これは「To Doをちゃんとやったかどうかの振り返り」です。現代の仕事ではTo Doが無くなることはないから、どんどん嫌になります(笑)。それでは、一日の終わりに何を振り返ったらよいか? これはハーバードビジネススクールの先生たちの、画期的な研究があります。見つけたことは「To Feel」でした。つまり、今日一日の中で印象に残ったことは何か、「感情」を振り返る。PDCAを回さなくていいというのも面白いところです。何が印象に残ったかを考えるだけで、自然と良い方向へ評価が上向いていきます。これは測るだけダイエットみたいなものだと思います(笑)。単に測っているだけですが、その過程において意識・無意識レベルの様々な振り返りをしているのでしょう。だから一日を終わる時は、今日印象に残ったことを振り返る。良いことでも悪いことでも構わないと言われています。



次回開催

早期戦力化の新潮流#2