Leaders’ Cafe Report 01

去る2017年11月7日、Leaders’カフェの第一回が開催されました。
参加者からは「違う業界の育成の取り組み事例を知ることができ大変刺激になった」「今日のロールプレイをそのまま社内教育において披露したい」「具体的に指摘することの重要性を感じました」など、多くの前向きなお声とともに「ぜひ次回も開催してほしい」「次回はいつ頃ですか?」というお言葉も頂き、アンケートも大変満足度の高い結果となりました。
ゲストの櫻井氏、および育成に日々真剣に向かい合われている参加者の方々が、率直に経験や悩み、工夫等を共有して、議論が盛り上がったお陰様であると感じています。
このレポートではそんな会のダイジェストをお届けいたします。

1.イントロダクション

代表の佐々木 文平より、自己紹介と「Leaders’カフェ」開催の背景をお話ししました。

代表 佐々木

このLeaders‘カフェを
開催するきっかけ

Co-Growth 代表 佐々木

このLeaders’カフェを開催するきっかけは、ある大手生命保険会社の方から「是非色々な業界の営業事例を知りたい、かつ営業マン同士の交流できる場が欲しい」と仰っていただいたのが始まりです。組織の営業力を強くしようと尽力しているからこそ、他の営業マン・他の業界の事例から学べることがあるだろうという想いから、この会を企画しました。そして動画を用いてフィードバックするリフレクトルを活用することで、他業界の実例をより見える化し、参加者の議論を具体的なものにできればと思っています。

そして佐々木より櫻井将氏のこれまでの経歴と、Leaders’カフェのゲストとしてお越しいただいた背景をお話ししました。

櫻井氏は元ワークスアプリケーションの営業で現エール株式会社の代表取締役。パッケージソフトウェアの営業として、顧客の課題を丁寧に聞きだしながら、最適な導入の形については鋭い意見も伝えるスタイルで、ワークスアプリケーション在籍中には法人営業にて歴代最高額の受注により社長賞を受賞。その後転職したgCストーリー株式会社では営業・マーケティング・新規事業・子会社の経営に従事。現在はエール株式会社の代表として「アナログとデジタルを統合した人材育成&チームビルディング」に取り組んでいる。経営者やアーティストのメンタルコーチとしても活動され、人間の成長段階を学ぶ一貫で保育士の資格も取得。心理学、認知科学、脳科学などを深く学ばれ、それらに基づいた部下育成を実践されている。

櫻井将氏

人間心理が好きで、今の仕事に

櫻井将氏

営業やチーム作り、人材開発に携わってきました。「人がなぜその行動をするのか?」「どういう関わり方をすると人が育つのか?」といった人間心理が好きで、人と人とのコミュニケーションについて学んできました。

続いてご参加頂いた皆様に自己紹介と参加動機を順にお話頂きました。参加動機は以下のようなものでした。

  • 同業から学ぶことだけでなく他業種の方から学ぶことは多いと思い参加した
  • 営業マンを育てる、部下を育成するというのはまさに今の自分の課題。これは行くしかないと思って来ました
  • 業界の常識にとらわれてしまうところを、打ち砕いてくれるんじゃないか、得られるものがあるんじゃないかと期待して参加しました
  • 興味!営業を科学するという部分に惹かれて来ました

2.育成における課題の共有と、ゲストによる育成法・育成哲学のシェア

ゲスト・櫻井氏がこれまでに直面した部下育成における課題と、解決に向けた取り組み/工夫をお話しいただきました。

私がワークスアプリケーションにいた際に悩んだ育成に関する課題は3つでした。1つ目は「成果と成長のバランス」。2つ目は「2階層になった場合のマネジメント」。3つ目は「部下が「理解できるけど、実践できない」場合への対処法」です。

マストな成果をあげながら、マックスの部下の成長を追い求める

「成果と成長のバランス」については、マネージャーによってバランスが異なるものだと感じています。私の場合、試行錯誤の末に行きついた自分の結論は「マストな成果をあげながら、マックスの成長を追い求める」でした。これが自分のあり方として納得できると感じ、長期的に見ると組織の成果の最大化にも繋がると思っています。

2階層になった場合のマネジメント

自分がチームリーダーで数名の部下に接しているときは、何が課題でどうしたら変わるか直接指導できます。しかしその上の部長になると、チームリーダーを通じて指導を行き渡らせることの難しさを感じました。そこで行き着いた解決策は、育成の手法と哲学を確立・仕組み化し、それを組織の皆と共有することです。

メンタルの問題か、スキルの問題か見極めて対応する

上述の育成の手法と哲学の中身になりますが、「部下が『理解できるけど、実践できない』場合への対処法」は、できない理由がメンタルの問題なのかスキルの問題なのかの見極めが重要です。

人間は主観的な生き物で、見なされたようになる。よって増えて欲しい言動を指摘することが重要

まずメンタルが問題の場合ですが、私は人の成長を考える際に「人間は主観的な生き物である」ことを踏まえることが大切だと思っています。例えば、私には一歳半の子供がいます。椅子に座ってご飯を食べるようになってきたのですが、すぐに飽きる。客観的な立場からだと、座って食べるのが正しいから、立ち上がった時に座って食べなさいと指導したくなる。でも私が心理学を学んでいてなるほどと思ったのは、人間は主観的なもので、「指摘されて認識した行動が増える」という科学に基づいた原理原則です。ですので、子供が10回中2回座っているタイミングに指摘をするとそれが10回中3回、4回と増えていくわけです。部下の育成でも同様です。私の部下で、週に4回遅刻する者がいました。遅刻癖がある以外は成績優秀で勤務態度も申し分ない。しかし「遅刻するな」と言い続けても全く直りません。週4日遅刻するのですが、裏を返せば週に1日は遅刻せずに出社しています。そこでその1日を指摘したところ、遅刻が徐々に減った(=指摘した箇所の発生確率が上がった)、ということが起きました。この指摘をする前提には「この部下は本当は遅刻せずに来れる人間なんだ」というリーダー側の信念が必要です。

課題がスキルである場合に重要なのは「具体を扱うこと」

続いてスキルが問題の場合ですが、部下指導の際にやりがちなのは、抽象的な指摘をしてしまうという失敗です。例えば「お前、お客さんの立場に立ててないよね」「自社製品の説明が単調で全然伝わってないから、もっと練習しろ」といった指導はよくある光景ですが、指導されたメンバーはどう改善したら良いか、実は腹落ちしていません。何を変えれば良くなるのかについて、具体的な指摘・指導をされて初めて理解し、行動に落とし込めるものです。この点についてワークスアプリケーションでは、メンバーは営業した当日に『一言一句議事録』を書き上げ、マネージャーが必ず見てフィードバックする、という文化が確立されていました。これにより「なんでこの言葉を言ったの?」とか「お客さんのこの言葉のこの語尾ってどういう意味で捉えたの?」「こういう発言をしたけど、お客さんの立場に立ってその言葉聞いてみて、どんな風に思う?」「この〇〇と言う説明を受けたら理解できるかを、お客さんとして感じてみて」といった具体的なやり取りの中でやっと相手の立場に立つことを理解できます。抽象的に扱ってしまうと全然解決しない問題が具体的な場面を扱うことで解決し、その解決のスピードもグッと早くなったという実感があります。
櫻井氏のお話を呼び水に、参加者が感じている課題や取り組んでいること、育成の成功事例などを共有しました。

3.ゲストによる営業実演と、評価グラフの共有

本コーナーでは、櫻井氏に2パターンの営業実演をしていただきました。1回目はゲストの方が後輩/部下の営業を見て要指導と感じてきた営業の実演、2回目は模範的営業(ゲストのありのままの営業の姿)の実演です。
両者を比較して櫻井氏が語ってくださったポイントから3つをピックアップして、以下にまとめました。

質の低い質問を淡々と続けるのではなく、考えさせる質問を投げかけ、気付きを引き出していく

前半のロールプレイでは、人事担当部長に対して「参加人数は」「どなたが参加されるか」「年齢は」などの質問が尋問のように続きます。メールでも聞き出せる内容しか把握できない上、一方的な質問で印象も悪くなります。一方、後半のロールプレイではお客様の気付きを引き出すような質問をすることで、有益な情報を聞き出すことができています。先方が知っていることを答えてもらうのでは意味がなく、話す中で気付いてもらうことが重要で、それを引き出すための有効な質問を投げかけられるかがキーポイントです。

要指導の実演の会話

次回のデモンストレーションに参加されるのは何名でしたか?

お客様:

6名ですね

営業マン:

どなたが参加されますか?

お客様:

人事部から役員、部長、担当者の3名と、システム部から役員、部長、担当者3名の計6名ですね。

営業マン:

時間は14時からでしたよね?

お客様:

そうですね

模範的実演中の会話①

来週デモンストレーションに参加される6名の中で、佐々木さんとして気になることはありますか?

お客様:

あー、⼈事の担当役員は結構ネゴできてるんでイイのですが、システム担当役員が何て⾔うか⾒えなくて

営業マン:

実際どんなことを言われそうですか?具体的に⾔いそうなことを1つ2つ挙げるとどんなことがありますか?

模範的実演中の会話②

システム担当の⽅は、今回デモンストレーションが終わった後にどうなっていれば良いか、佐々木さんの中でイメージはありますか?

お客様:

そうですね……「これいいね!」とまでなっていなくても良いかもしれないですね。「まぁこれならいいんじゃない」ってなれば。

営業マン:

「これいいね!」とまでいかなくても「これなら良いんじゃない」となればいい、ですか

お客様:

そうですね。基本的に進めるのは人事部門なので、システムからはノーと言われなければ進むのかなと思っています。

お客様から出てきた言葉を深掘りする質問を投げかける

前半では、せっかくお客様からの要望として出てきた「人材育成」というワードを深掘りせずに、聞き流してしまっています。その言葉の背景に何があるのか、求めているのはどういうことかをもっと聞き出せたはずです。後半ではお客様から出てきた言葉を深掘りすることで、より先方の情報を深く正確に知ることができています。状況や障壁、課題などをしっかりと把握することで、的を得た対策を講じることができます。

要指導実演の会話

営業マン:

何かご要望はありますか?

お客様:

⼈事部⻑は⼈材育成に興味があるので、そこに時間を取ってほしいですね。

営業マン:

分かりました、人材育成ですね。他には?

模範的実演の会話①

お客様が懸念しているシステム部長について

お客様:

実際どんなことを⾔われそうですか?

営業マン:

1つはRPAの話が出そうですね。最近やたらRPAと⾔っているので。もう1つは、コストの話ですかね、やはり。

お客様:

やはり、と言いますと?

営業マン:

彼はかなりコストにうるさくて。特に初期費⽤よりも運⽤費⽤にうるさいですね。固定費を下げろ、ってよく⾔っています。

模範的実演の会話②

他に気になっていることとか、注意していることはありますか?これは絶対に⾔わない方が良い、などあれば。

お客様:

それで⾔うと⼈事の役員は、「⼈員削減」って ワードはあんまり好きじゃないですね。

営業マン:

人員削減ですか…それはどういうことを意味していますか?

お客様:

実は昔、⼤幅なリストラをしたことがあって。やはり従業員 の雇⽤は守りたいっていつも⾔ってるので。

営業マン:

なるほど、そうするとシステムの導入をすることで人員削減できる、という話の流れではなくて、効率化したことでより生産性の高い重要な仕事に時間を割くことができます、というアプローチをさせていただきます。

人間関係など、答えにくい内容を不しつけに聞かず、事例を最初に自己提示するなど話しやすい状態を作り出す

前半では、唐突に「佐々木さんはシステム部長とは仲が良いんですか?」と聞いていますが、これは不しつけに感じられ印象を悪くします。後半では質問の意図を伝えて事例を提示してから質問をしました。答えづらい質問をする際には、始めに話しやすい状態を作ることが大切です。

要指導実演の会話

(唐突に)佐々木さんはシステム部長さんとは仲良いんですか?

お客様:

いや、そんなに悪くはないですよ。まぁ普通です。

模範的実例の会話

最後に一点だけ確認させてください。他社さんですと、例えば人事役員とシステム部長が犬猿の仲であるとか、こちらがOKを出すとあっちがNOと言う…といったことがあったりしますが、今回の6人だと何か気をつけた方が良いことはありますか?

お客様:

それでいうと、システム部⻑は元々⼈事の担当役員の下にいた⼈間で、実は今のシステム役員よりも、⼈事役員への信頼が厚かったりしますね。

実演を見ながら、具体的場面を取り上げて育成力を高めるワークを行いました。参加者の皆様には、ロールプレイを撮影しながら、良い/要指導な場面に評価をご入力いただきました。その上で全員の評価を統合し一つのグラフにしたものを共有しました。

分散グラフ

模範的実演の中でもマイナス評価がありました。営業マンの質問「システム担当の⽅は、今回デモンストレーションが終わった後にどうなっていれば良いか、佐々木さんの中でイメージはありますか?」という質問をめぐって、議論が盛り上がりました。

4.ゲストの現在の取り組みのご紹介

櫻井将氏

エール株式会社では、クラウドで上司を提供するBtoB事業を行っています。大企業のマネジメント経験者である“クラウド上司”が、週1回対象の従業員と電話セッションを行います。これからの時代、従業員1人1人異なる動機を引き出しながら、組織の目的を達成することが求められます。とは言え、上司となる方々は非常に忙しく、重要ではあるが緊急度は低い人材育成には時間が避けていません。IT・テクノロジーが進み、人材育成にも外部リソースを積極的に活用できる時代に“クラウド上司”が組織を目標達成へと導きます。

櫻井氏からは、プレーヤーとサポーターの性格特性とセッション有意義度の相関図という、抽象的なことを数値化した非常に興味深い資料を見せていただきました。セミナーも開催されていますので是非お問い合わせください。
エール株式会社 http://www.yell4u.jp/news/happyatwork

5.懇親会

真剣に議論したあとは、お酒を交えながらざっくばらんに営業や部下育成について話しました。フランクで和気あいあいとした雰囲気の中、営業や仕事術など有意義な会話は尽きることなく、全員が23時の閉店までご参加くださいました。

参加者のご感想

  • 「育成の方法についてたくさんの具体的な学びがありました。本日の気付きを明日から活かしたいと思います」
  • 「業界横断で営業のリーダーが集まる場は珍しく、とても面白い勉強会でした」
  • 「とても刺激的で楽しい時間でした。カフェそのものの時間の学びももちろんのこと、ポジティブなエネルギーを頂いたおかげで、その後の毎日が、頑張ろう!という、前向きな時間になっています。素敵な人、オープンな雰囲気、前向きな考え方に触れるというのはとても楽しいですね!」
  • 「佐々木代表のまっすぐな情熱が伝わって、とても良い雰囲気でした。また幅広い業種の方が集まって第2回、3回と続いていくのが楽しみです」
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